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単元 (3) コンピュータとプログラミング | 単元設計
逆算で設計する(高次の資質・能力 → 単元の目標・評価規準 → 評価課題 → 学習過程 → 形成的評価)。根拠: 学習指導要領解説 情報編 (3)、新編情報Ⅰ 評価規準例(第3章 21〜30節)、設計指針第2版(カテゴリ A・C・E・F を中心に、K)、情報・技術WG の要点(プログラミング的思考を手順・コード中心から、目的・価値・責任・評価改善を含む課題解決全体へ)。本文の [解説][規準例][指針][WG] は、下の出典の該当箇所を指す。
本質的な問い
足し算しかできない機械が、なぜ何でもできるように見えるのか。手順を書くとは、何を決めることか。
単元の目標(3観点)
| 観点 | 単元の目標 |
|---|---|
| 知識・技能 | 五大装置と CPU・メモリの役割、ソフトウェアの層、論理回路と加算、計算の限界(誤差)、アルゴリズムの表現(フローチャート)、順次・分岐・反復・リスト・乱数・関数を使ったプログラム、モデルの種類とシミュレーションの手順を、自分で動かした結果と結びつけて説明できる |
| 思考・判断・表現 | 目的に応じたアルゴリズムを考えて表現し、プログラムを書いて動かし、結果を見て直せる。事象をモデル化してシミュレーションし、モデルの違いで結果が変わることを踏まえて解決方法を選べる |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 意図しない結果が出たときにデータや手順に目を向けて改善しようとし、身のまわりのプログラムを見いだして活用・改善しようとしている |
指導要領の対応: [解説 (3)]ア(ア)(イ)(ウ)、イ(ア)(イ)(ウ)。[解説 内容の取扱い (4)]: 「アの(イ)及びイの(イ)については、関数の定義・使用によりプログラムの構造を整理するとともに、性能を改善する工夫の必要性についても触れる」「アの(ウ)及びイの(ウ)については、コンピュータを使う場合と使わない場合の双方を体験させるとともに、モデルの違いによって結果に違いが出ることについても触れる」。前半が第8回の関数と評価課題の A 水準、後半が第4回の手順カード(使わない)と第10回(使う)、そして第10回の条件を変えて見る活動になる。
教室での実行環境
Python を教科書どおりに使う。各回のページに「Python を動かす」欄があり、端末のブラウザの中で実行する(Skulpt。入力はどこにも送らない)。 print・input・変数・if・for・while・リスト・random・def が動く。無限ループは 4 秒で止まる。スマホでも動くが、キーボードのある端末が望ましい。
評価課題(単元末のパフォーマンス課題)
「身のまわりの手作業を 1 つ、プログラムに任せる」(第11回・第12回)
- 目的(何を楽にするか)を決め、手順を 3〜5 行の言葉で書き(アルゴリズム)、Python で書いて動かし(順次・分岐・反復のどれかを使う)、結果を見て直す
- 提案カードに「目的・手順・プログラム・結果と直したこと」を提出し、相互評価(「手順が明確」「動いて目的に合う」「直して良くなった」)を受けて改訂版を出す
| 観点 | B(おおむね満足) | A(十分満足) | C の生徒への手立て |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 順次・分岐・反復のどれかを使ったプログラムが動く | 関数かリストで構造を整理している | 授業で動かした短いプログラムをそのまま写させ、1 か所だけ数や文字を変えさせる |
| 思考・判断・表現 | 目的に合う手順を言葉で書き、プログラムにしている | 別の手順(アルゴリズム)と比べて、効率か分かりやすさで選んでいる | 「何を楽にしたいか」を 1 文だけ書かせ、手順は 3 行に限って日本語で書かせる |
| 態度 | 動かなかったところを直している | 直した点と理由を書き、次に何を任せたいかを挙げている | エラーのいちばん下の 1 行と行番号だけを一緒に読み、直す場所を指させる |
各回と評価
| 回 | 題 | 教科書 | 指導要領 | 評価の重点 | 主な体験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | コンピュータとは何か | 21 | ア(ア) | 知 | 五大装置に分ける/身のまわりのコンピュータを出し合う/ハードとソフトの層 |
| 2 | ソフトウェアの仕組み | 22 | ア(ア) イ(ア) | 知 | 小さな CPU を 1 命令ずつ動かす/CPU・メモリ・ストレージのたとえ |
| 3 | 演算の仕組みとコンピュータの限界 | 23 | ア(ア) イ(ア) | 知・思 | 論理回路のスイッチで真理値表/半加算器/0.1 + 0.2 の誤差 |
| 4 | アルゴリズムの表現 | 24 | ア(イ) イ(イ) | 思 | 手順カードを並べる/曖昧な指示を直す/分岐のフローチャートをたどる |
| 5 | プログラムの基本構造 1 | 25 | ア(イ) イ(イ) | 技 | print・演算・変数を動かす/面積のプログラム |
| 6 | プログラムの基本構造 2 | 26 | ア(イ) イ(イ) | 技 | if・for・while を動かす/無限ループを止める |
| 7 | プログラミングの工夫 | 27 | ア(イ) イ(イ) | 技・思 | 反復と分岐の組み合わせ/リスト/input |
| 8 | 発展的なプログラム | 28 | ア(イ) イ(イ) | 技・思 | 乱数でさいころ・じゃんけん/関数で分ける/おみくじを作る |
| 9 | モデル化とシミュレーション | 29 | ア(ウ) | 知・思 | モデルを 3 つに分ける/数理モデルのつまみ/実験できない場面 |
| 10 | シミュレーションの活用 | 30 | ア(ウ) イ(ウ) | 思 | さいころ 1 万回/くじ 1% を 100 回/感染の広がりを条件を変えて見る |
| 11 | プログラムで問題を解く | 単元末 | 全体 | 思 | 目的と手順を決め、書いて動かす |
| 12 | プログラムの評価と改善 | 単元末 | 全体 | 思・態 | 提出/相互評価/改訂版 |
設計指針(第2版)との対応
指針の表記は「カテゴリ・項目・水準」。たとえば E3L2 は、カテゴリ E の項目 3「アルゴリズムの構築」の水準 2。末尾の (高必) は高校の必履修科目で扱う水準、(中情) は中学校の情報の内容で扱う水準を指す。
- A. 情報およびコンピュータの原理: A2L2「プログラムでデジタル情報を扱うことの意味、圧縮/伸長や分散化/重複化などの意味が分かる」(高必) が第1〜3回。指針は「A2L2…は座学だけでは定着しにくいので、実習を取り入れる」とするので、小さな CPU を 1 命令ずつ動かす、論理回路のスイッチで真理値表を作る、0.1 + 0.2 の誤差を自分で出す。A2L1「コンピュータが『自動的に情報を処理する装置』であること」(小情) は前提として第1回で確かめる
- E. 計算モデル的思考: 指針は「E1L1、E1L2、E3L1、E3L2は、情報科の必履修科目の中で、アルゴリズムとプログラムに関する内容の中核部分として座学と演習を組み合わせて学ぶ」とする。E1L1「ステップで記述/数式や論理式で記述などの計算記述法を知っている」(高必) と E3L1「アルゴリズムと具体的な動作例の対応を理解している」(高必) は第4回の手順カードとフローチャート、E1L2「特定の計算記述とそのコンピュータ上での実行の対応づけ」(高必) は第2回の CPU と第5回、E3L2「アルゴリズムとプログラムコードの対応を理解している」(高必) は第5〜7回。指針が「基本的な問題解決の内容と関連させて取り扱い」とする E2L2「特定のタスクを複数のタスクに分解して示す」(高必) と E3L3「未知の問題に対して、それを解くアルゴリズムを導くとはどのようなことであるかを理解している」(高必) は、第11回で手順を 3〜5 行の言葉に分ける場面
- F. プログラムの活用と構築: 指針は「F2L3、F3L2、F3L3、F4L2は、高等学校における情報科の必履修科目の中のプログラミングの内容として、実際にプログラムを書く中で身につける」とする。F2L3「手続き等で構造化/抽象化したプログラムをテストつきで構築することの有用性を理解している」(高必) と F3L3「プログラムを機能単位に分解し、機能単位を実現するモジュールを協調させてプログラムを構築する方法」(高必) は第8回の関数と、評価課題の A 水準「関数かリストで構造を整理」。F3L2「要件/要求/仕様と作るものを明らかにしてプログラムを構築することの重要性」(高必) は第11回で目的と手順を先に書かせる理由。F4L2「ソフトウェアのあるべき動作と現実の動作の一致状況を系統的に調べ、場合によっては AI のサポートも用いて、誤り内容を特定/修正できる」(高必) は第6回の無限ループと第12回の改訂。指針は F4L2 について「AI に調べさせたり修正案を出させるのはよいが、何が問題だったか、なぜどのように修正したかは適切に説明できるべき」とするので、第12回の改訂版には「直した点と理由」を必ず書かせる。F1L3「プログラムを組み合わせたり構築/修正して意図した動作を正しく実現できる」・F3L1「プログラムのステップを模擬実行して確認しつつ作成/修正できる」・F4L1「想定動作と実際の動作を照合し違いを認識した上で修正できる」(いずれも中情) は中学校の水準なので、第5回で前提として確かめてから進む
- C. モデル化とシミュレーション/最適化: 指針は「C1L2、C1L3、C3L2、C3L3は、情報科の必履修科目の内容として、座学や実習を通じて取り扱うとともに、実際に問題解決をおこなう課題の一環としてこれらの内容を採り入れることが望ましい」とする。C1L2「数量的なモデル/離散的なモデルなどの例を理解している」(高必) と C1L3「現象や事象をもとにモデルを組み立てる方法を理解している」(高必) は第9回、C3L3「確率の関係する問題をサイコロや乱数を用いたシミュレーションで解くことができる」(高必) は第10回のさいころ 1 万回とくじ、C3L2「連続モデルや離散モデルを動かして一見明らかでない現象を説明できる」(高必) は第10回の感染の広がり。C1L1「プラモデル/地図/路線図などがモデルであると理解している」(中情) は第9回の入口で前提として確かめる。C2・C4L2 は (高選) なので扱わない
- K. 問題発見/問題解決: K4L1「自分の問題に対し記述/説明/分析/解の検討などが行なえる」(高必) が第11回、K2L2「問題発見/解決の結果を評価し、必要なら反復改善を行える」(高必) が第12回。指針が「必履修科目の中で問題解決の一環として実践を通じ扱う」とする水準を、(1) の単元末に続いてもう一度通す
- X. 人工知能(AI): 指針は高校必履修で X1L2・X2L3 として「実際に手を動かして認識プログラムや説明文などを生成させ」る経験を求める。この単元の各回にはその活動を置いていない。AI に関わるのは F4L2 の「AI のサポート」までで、使う場合は直した理由の説明を求める
WG の要点と、この単元
- 「プログラミング的思考を、手順・コード中心から、目的・価値・責任・評価改善を含む課題解決全体へ」→ 第4回の「曖昧さをなくす」、第10回の「モデルが適切か」、第11回で目的を先に決めること、第12回の改訂
- 「知識・技能の習得にとどまらず、実際の課題解決で活用できる高次の資質・能力」→ 単元末を文法のテストではなく、身のまわりの手作業を任せる提案と相互評価にした
- 「逆算し、教科書の見開きを毎時消化する方式から離れる」→ 教科書の節の順は守るが、第11・12回は節に対応しない
WG は 2026年6月の第11回までを参照した。審議中の内容なので、この単元は現行の学習指導要領(平成30年告示)のもとで実施できる形で書いてある。
生徒の探究とのつながり
この単元で身に付ける「手順を曖昧さなく書く」「目的を決め、書いて、動かし、結果で直す」「モデルが違えば結果も違う」は、そのまま総合的な探究の時間や課題研究の道具になる。授業の側からは、次でつなぐ。
- 第4回の「曖昧な指示を直す」は、探究の調査手順・実験手順を、他人が読んで同じ結果を出せる形で書くことに使う
- 第11・12回の流れ(目的 → 手順を言葉で → プログラム → 結果で直す)は、探究で集計や整形を手作業で繰り返しているときに、手順にして任せる進め方になる。100 件を数えるなら、数え方を書く
- 第9・10回の「モデルの違いで結果が変わる」は、探究で予測や試算をするときに、前提を書き出し、条件を変えて比べる姿勢になる。実験できない場面はシミュレーションで見る
- 意図しない結果が出たら、まず自分のデータと手順を疑う(第6・12回)。探究で「思った結果が出ない」ときも同じ順で見直す
- 各回の復習の最後は必ず「探究へ」で、その回の考え方を自分の探究のどこで使うかをメモする。メモは端末の中の 探究ノート に集まる。サーバには送らない
他校でそのまま使える形にする
学校固有の呼び名や、校内で使っている道具の名前は書かない。Python の実行はページの中で完結し、どの学校でもこのページだけで動く。ファイルの保存先や提出の方法は、教師用メモで「学校の方法に置き換える」と示す。
出典
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編
- 文部科学省。解説 情報編(PDF)、高等学校学習指導要領の告示・解説の一覧
- 該当箇所: 第2章 第1節 情報Ⅰ 「2 内容とその取扱い」の (3) コンピュータとプログラミング(ア(ア)(イ)(ウ)、イ(ア)(イ)(ウ))と、「3 内容の取扱い」の (4)
教科書の評価規準例(指導用資料)
- 東京書籍『新編情報Ⅰ』(教科書番号 情Ⅰ 002-901)の指導用資料「評価規準例」。教科書の紹介ページ
- 第3章 第21〜30節(コンピュータとは何か/ソフトウェアの仕組み/演算の仕組みとコンピュータの限界/アルゴリズムの表現/プログラムの基本構造1/プログラムの基本構造2/プログラミングの工夫/発展的なプログラム/モデル化とシミュレーション/シミュレーションの活用)。各節に 知・思・態 の評価規準、評価方法、B・A・C↑ が示されている
- 指導用資料は採用校に配布されるもので、本文はこのページに転記しない。上の表の節番号と水準の使い方だけを示した
情報教育課程の設計指針 − 初等教育から高等教育まで(第2版)
- 日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会 報告、令和8年(2026年)5月12日。報告本文(PDF)、情報処理学会の紹介ページ
- 使った箇所: 「(2) カテゴリ」の一覧(A〜K、X)、各カテゴリの項目と水準の表(A・C・E・F・K・X)、「学校段階ごとの扱い」の高等学校の記述
中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ
- 文部科学省。会議のページ(議事録・配付資料)、第11回 配付資料(2026年6月25日)
- 第1回(2025年9月25日)から第11回までの資料を読んでまとめた要点を使った。審議中のため、方向として参照し、この単元は現行の学習指導要領(平成30年告示)のもとで実施できる形で書いてある