一覧へ | 単元設計
単元 (4) 情報通信ネットワークとデータの活用 | 単元設計
逆算で設計する(高次の資質・能力 → 単元の目標・評価規準 → 評価課題 → 学習過程 → 形成的評価)。根拠: 学習指導要領解説 情報編 (4)、新編情報Ⅰ 評価規準例(第4章 31〜40節)、設計指針第2版(カテゴリ A・D を中心に、J・I・G・K)、情報・技術WG の要点(データを多面的に精査し、根拠にして判断する)。本文の [解説][規準例][指針][WG] は、下の出典の該当箇所を指す。
本質的な問い
遠くの誰かに届くのはなぜか。集めた数字は、何を言えて何を言えないのか。
単元の目標(3観点)
| 観点 | 単元の目標 |
|---|---|
| 知識・技能 | ネットワークの構成要素とプロトコルの役割、パケット交換の仕組み、サーバが提供するサービス、情報セキュリティを確保する技術(認証・暗号化・署名)、データベースとデータモデル、データの形式と尺度、収集から可視化までの流れを、自分で動かした結果と結びつけて説明し、データを整理・可視化できる |
| 思考・判断・表現 | 目的に応じてネットワークの構成要素と安全を守る方法を選べる。情報システムのサービスの使い方を、渡す情報と受ける便益の両面から評価できる。問いに応じてデータの収集・整理・分析・表現の方法を選び、実行し、結果を評価して直せる |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 情報セキュリティに配慮して自分の使い方を見直そうとし、データを多面的に精査し、根拠を示して伝えようとしている |
指導要領の対応: [解説 (4)]ア(ア)(イ)(ウ)、イ(ア)(イ)(ウ)。[解説 内容の取扱い (5)]: 「アの(ア)及びイの(ア)については、小規模なネットワークを設計する活動を取り入れる」「アの(イ)及びイの(イ)については、自らの情報活用の評価・改善について発表し討議するなどの活動を取り入れる」「アの(ウ)及びイの(ウ)については、比較、関連、変化、分類などの目的に応じた分析方法があることも扱う」。順に第4回、第6回、第11回の見せ方の選択になる。
教室での実行環境
データはページの中で扱う。表・散布図・相関の計算は、そのページの中で動く部品で行う(どこにも送らない)。第9〜12回で自分のデータを扱う場合も、個人が特定できる項目は入れない。 第11・12回は、公開されているデータ(気象、統計、学校で集めたアンケート)を用いる。表計算ソフトを使ってもよい。
評価課題(単元末のパフォーマンス課題)
「データを根拠に、一つ提案する」(第11回・第12回)
- 身のまわりか社会から問いを立て、必要なデータを決めて集め、整理し、目的に合う見せ方(比較・関連・変化・分類のどれか)で可視化し、そこから言えることと言えないことを分けて提案する
- 提案カードに「問い・使ったデータ・見せ方・言えること・言えないこと」を提出し、相互評価(「問いとデータが合う」「見せ方が目的に合う」「言えないことを分けている」)を受けて改訂版を出す
| 観点 | B(おおむね満足) | A(十分満足) | C の生徒への手立て |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | データを整理し、1 つの方法で可視化している | 欠損値や外れ値の扱いを決め、複数の見せ方を比べて選んでいる | 配った表をそのまま使わせ、列を 1 つ選んで棒グラフにするところだけをやらせる |
| 思考・判断・表現 | 問いに合うデータを選び、結果から言えることを述べている | 言えないこと(相関と因果の別、データの偏り)を挙げ、次に何を調べるかを示している | 「この数は、誰の、いつの話か」を先に 1 行書かせてから、言えることを書かせる |
| 態度 | 評価をもとに直している | 直した点と理由を書き、次の問いを立てている | 受けた指摘のうち 1 つだけ選ばせ、直す前と後を並べて残させる |
各回と評価
| 回 | 題 | 教科書 | 指導要領 | 評価の重点 | 主な体験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ネットワークとインターネット | 31 | ア(ア) | 知 | 経路を切っても届くのを試す/LAN と WAN を分ける |
| 2 | インターネットの仕組み | 32 | ア(ア) イ(ア) | 知 | 文をパケットに分けて送り、順番を入れ替えて届ける/階層を分ける |
| 3 | サーバとクライアント | 33 | ア(イ) | 知 | サーバの種類を分ける/認証の後に使えるものを出し合う |
| 4 | インターネット上のサービス | 34 | ア(ア) イ(ア) | 思 | 小さなネットワークを設計する/つながらないときの調べる順番 |
| 5 | 情報セキュリティ | 35 | ア(ア) イ(ア) | 知・思 | 共通鍵で暗号にする/公開鍵の鍵の掛け方を選ぶ/改ざんを見つける |
| 6 | データの活用とデータベース | 36 | ア(イ) イ(イ) | 思 | 同時に書き換えて矛盾を起こす/自分が渡している情報を評価し討議する |
| 7 | さまざまなデータモデル | 37 | ア(イ) | 知 | 2 つの表をつないで答えを出す/重複が起こす困りごと |
| 8 | データの形式 | 38 | ア(ウ) | 知 | 尺度で分ける/平均を出してよいか判断する |
| 9 | データ分析の流れ | 39 | ア(ウ) イ(ウ) | 技・思 | 欠損値と外れ値を外すと結果が変わるのを見る/PPDAC をたどる |
| 10 | 2つの事柄の関係 | 40 | ア(ウ) イ(ウ) | 思 | 点を動かして相関係数を変える/相関と因果を見分ける |
| 11 | データで提案する | 単元末 | 全体 | 思 | 問いを立て、データを選び、可視化して提案する |
| 12 | データの図表の評価と改善 | 単元末 | 全体 | 思・態 | 提出/相互評価/改訂版 |
設計指針(第2版)との対応
指針の表記は「カテゴリ・項目・水準」。たとえば D4L3 は、カテゴリ D の項目 4「データと統計」の水準 3。末尾の (高必) は高校の必履修科目で扱う水準、(中情) は中学校の情報の内容で扱う水準を指す。ネットワークとセキュリティは指針ではカテゴリ A に、データはカテゴリ D に入る。
- A. 情報およびコンピュータの原理: 指針は「A2L2、A3L3、A4L3は座学だけでは定着しにくいので、実習を取り入れる」とする。A3L3「ネットワークの構造/パケット/プロトコル等の原理や役割を理解している」(高必) は第1・2回(経路を切っても届く、文をパケットに分けて送る)と第4回の小さなネットワークの設計([解説 内容の取扱い (5)])。A4L3「情報セキュリティの考え方/原理と暗号技術の安全を保つ方法などを理解している」(高必) は第5回。A3L2「ネットワークの構成や、その上のコミュニティ、ルール/マナー等の考え方」(中情) と A4L2「マルウェア、不正アクセス等のセキュリティの基本知識」(小情) は前提として第1・5回で確かめる。(1) の第5回で名づけた 3 要素(機密性・完全性・可用性)に、ここで技術をつける
- J. システムとその設計: J1L2「サイバーフィジカルを含む多様なシステムの例やその意図/仕組み/機能/特徴/役割/限界などを調べたり確認できる」(高必) を、指針は「情報社会の内容の一環として取り扱い、実習を併用」とする。第3回のサーバの種類、第6回の「自分が渡している情報を評価し討議する」がその場面
- D. データとその扱い: 指針は「D2L1、D2L2、D3L2、D3L3、D4L3、D5L1は、情報科の必履修科目の中で座学の形で学んだ上、実習などで実際にデータを取り扱いながら身につける」とする。D2L1「データベース/アーカイブ/オープンデータ、匿名化等の必要性や意義が分かる」(高必) は第6回、D2L2「実データとしてオープンデータなどを用いてさまざまな問い合わせを実行できる」(高必) は第7回の 2 つの表をつなぐ操作と第11回の公開データ。D3L2「定性/定量データの違いや機械可読/クレンジングの問題」(高必) は第8回の尺度と第9回の欠損値・外れ値、D3L3「データに対する信頼性/バイアス/プライバシー等の問題や対処法が分かる」(高必) は第9回と、第11回で個人が特定できる項目を入れないと決めること。D4L3「ヒストグラムや散布図などの視覚化と単回帰分析や分布/相関/因果の検討ができる」(高必) は第10回、D5L1「実データを扱う課題に PPDAC プロセスを適用できる」(高必) は第9回でたどり、第11・12回で自分の問いに使う。D1L3「社会において調査データ/実験データ/ログデータが広く活用されていることを知っている」(高必) は、指針が「実習の前後に機会を捉えて」とするので第6・8回の導入に置く。D4L1・D4L2(標本、平均/分散/中央値/四分位数。中情)は中学校の水準なので、第8回で前提として確かめる。D1L4・D2L3・D5L2 は (高選) なので扱わない
- I. 論理性と客観性: I2L2「錯覚/錯視や『見たいものを見る』等、人間の認知の特性を意識できる」(高必) と I2L3「先入観/同調圧力/吊り橋理論等、人の判断に影響する事象を知っている」(高必) を、指針は「人間の特性として含め、実習時に配慮」とする。第10回の相関と因果、第11回の「言えないこと」を分ける活動がその場面。I1L3「前提や帰結を整理し論理の筋道を構築できる」(高必) は提案の「問い → データ → 言えること」の並びで求める
- G. コミュニケーションとメディアおよび協調作業、K. 問題発見/問題解決: G3L3「共同作業の目的や進め方を集団の前でプレゼンテーションできる」(高必) と G4L3「相手の発言内容が自分の望みと違う時にも相手の立場を理解できる」(高般) は第12回の相互評価。K1L2「問題とそれに影響する事項の関連を定式化したり分析したりできる」(高必) は第11回の問いとデータの対応、K2L2「問題発見/解決の結果を評価し、必要なら反復改善を行える」(高必) は第12回の改訂
WG の要点と、この単元
- 「データを多面的に精査し、根拠にして判断する」→ 第10回の交絡、第11・12回の「言えること/言えないこと」
- 「知識・技能の習得にとどまらず、実際の課題解決で活用できる高次の資質・能力」→ 単元末を用語のテストではなく、データを根拠にした提案と相互評価にした
- 「情報Ⅰは基盤理解から……PBL による統合へ」→ 第11・12回を 4 単元の締めの PBL とし、(1)〜(3) の単元末で通した手順をここで束ねる
WG は 2026年6月の第11回までを参照した。審議中の内容なので、この単元は現行の学習指導要領(平成30年告示)のもとで実施できる形で書いてある。
生徒の探究とのつながり
この単元で身に付ける「問いに合うデータを選ぶ」「尺度で分けてから集計する」「言えることと言えないことを分ける」は、そのまま総合的な探究の時間や課題研究の道具になる。授業の側からは、次でつなぐ。
- 第9回の PPDAC(問い → 計画 → データ → 分析 → 結論)は探究そのものの骨組み。探究の計画書をこの 5 つで書く
- 第8回の尺度と「平均を出してよいか」は、探究でアンケートの設問を作るときと、集計するときの判断に使う
- 第10回の相関と因果、第11回の「言えないこと」は、探究の結論を書くときの歯止めになる。「関係がある」と「原因である」を分けて書く
- 第5・6回の認証・暗号と「自分が渡している情報」は、探究で人からデータを集めるときの、個人情報の扱いと匿名化の判断に使う
- 各回の復習の最後は必ず「探究へ」で、その回の考え方を自分の探究のどこで使うかをメモする。メモは端末の中の 探究ノート に集まる。サーバには送らない
他校でそのまま使える形にする
学校固有の呼び名や、校内で使っている道具の名前は書かない。表・散布図・相関の計算はページの中で完結し、どの学校でもこのページだけで動く。生徒の個人情報は扱わない。表計算ソフトを使う場合は、教師用メモで「学校のものに置き換える」と示す。
出典
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編
- 文部科学省。解説 情報編(PDF)、高等学校学習指導要領の告示・解説の一覧
- 該当箇所: 第2章 第1節 情報Ⅰ 「2 内容とその取扱い」の (4) 情報通信ネットワークとデータの活用(ア(ア)(イ)(ウ)、イ(ア)(イ)(ウ))と、「3 内容の取扱い」の (5)
教科書の評価規準例(指導用資料)
- 東京書籍『新編情報Ⅰ』(教科書番号 情Ⅰ 002-901)の指導用資料「評価規準例」。教科書の紹介ページ
- 第4章 第31〜40節(ネットワークとインターネット/インターネットの仕組み/サーバとクライアント/インターネット上のサービス/情報セキュリティ/データの活用とデータベース/さまざまなデータモデル/データの形式/データ分析の流れ/2つの事柄の関係)。各節に 知・思・態 の評価規準、評価方法、B・A・C↑ が示されている
- 指導用資料は採用校に配布されるもので、本文はこのページに転記しない。上の表の節番号と水準の使い方だけを示した
情報教育課程の設計指針 − 初等教育から高等教育まで(第2版)
- 日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会 報告、令和8年(2026年)5月12日。報告本文(PDF)、情報処理学会の紹介ページ
- 使った箇所: 「(2) カテゴリ」の一覧(A〜K、X)、各カテゴリの項目と水準の表(A・D・G・I・J・K)、「学校段階ごとの扱い」の高等学校の記述
中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ
- 文部科学省。会議のページ(議事録・配付資料)、第11回 配付資料(2026年6月25日)
- 第1回(2025年9月25日)から第11回までの資料を読んでまとめた要点を使った。審議中のため、方向として参照し、この単元は現行の学習指導要領(平成30年告示)のもとで実施できる形で書いてある