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情報Ⅰ (2) コミュニケーションと情報デザイン | 第2回

ネットコミュニケーションの特徴

名前を出さずに書けるが、書いたことは全部残る。その両方をこの教室で確かめる

50分
教師用メモ

準備 教室コードは新しいものにする。「教師」を押す。体験 01 は投影側であとから「端末の印と時刻」が表示される(教師表示のみ)。最初は生徒に言わない。

時間配分 前回まとめ・目標 4分 / 節1 匿名で書く 14分 / 節2 実名と匿名 12分 / 節3 消せるか 14分 / まとめ・自己評価・ふりかえり 6分

教科書: 新編情報Ⅰ 12 ネットコミュニケーションの特徴(p.38)。

この回の評価(指導要領 (2) ア(ア) イ(ア)。匿名性・記録性、状況に応じたメディアの選択。設計指針 H のジレンマとして「忘れられる権利」。単元設計は 単元設計のページ)

  • 知識・技能 匿名性と記録性を、教室での体験(名前なしで書けた/端末と時刻が残っていた)と結びつけて説明している(体験01)
  • 思考・判断・表現 実名と匿名の得失を場面で判断し、忘れられる権利に根拠をつけて立場を述べている(体験02・03)
  • 態度 記録が残ることを前提に、自分の発信の仕方を見直そうとしている(ふりかえり)

ふりかえりの枚の自己評価の分布を見て、「まだ」が多い目標を次回冒頭で拾い直す。

前回のまとめ

目的・相手・状況で選び、足りなければ組み合わせる

同期 / 非同期×1対1 / 1対多→目的に合わせて選ぶ・重ねる

ネットの手段(メッセージ・投稿・掲示板)には、手紙や電話にはない特徴が 2 つある。今日はその 2 つを、この教室で実際に起こしてみる

名前を出さずに書くと、何が変わるか

教師用メモ

前回のふりかえり(つながり方が変わった例)を 1 つ読み上げてから進む。

今日の目標

授業の終わりにできるようになること

01
ネットのやりとりの匿名性と記録性を、自分の例で説明できる
02
実名と匿名の得失を比べ、場面に応じて判断できる
03
記録が消せないことと「忘れられる権利」について、根拠をつけて立場を述べられる
01 | 14分
匿名で書く

名前なしで、教室に一言

02 | 12分
実名と匿名

得失を分ける

03 | 14分
消せるか

忘れられる権利を考える

SECTION 01

匿名で書く

誰が書いたか分からない。本当に

顔の見えない相手と、文字だけでやりとりしている高校生
体験 01

名前を出さずに、この授業への一言を送る

名前は出ない。この授業(情報の授業)について思っていることを一言。良いことでも困っていることでもよい。人を傷つける言葉は書かず、自分がどう感じたかを書く

0
送られた一言
0
送った端末の数
教室の一言
教師用メモ

進め方(10分)

  • 全員が 1 通送る(3分)。「名前は出ない」とだけ言う。普段より率直な声が並ぶ。
  • 読み上げて「名前が出ないと、書き方は変わった?」と聞く(匿名性: 立場にとらわれず言える/不確かなことも書きやすい)。
  • そのあと種明かし。投影は「教師」表示なので、各投稿の右に「端末 xxxx | 時刻」が出ている。「名前は出ていない。でも、どの端末がいつ送ったかは全部残っている」。生徒の端末には出ない。
  • 「学校や会社のネットも同じ。アクセス元・時刻・見たページが記録されている」(記録性)。

端末の印は端末ごとの乱数で、氏名とは結びついていない。そのことも正直に言う。「結びつけようと思えば、座席と時刻でできる」が現実。

まとめ 01

匿名性と記録性 | 名前は隠せる、記録は残る

匿名性
名前や所属など、個人の特定につながる情報を隠して発信できる
立場にとらわれず言える。内部告発もしやすい
不確かな情報の発信・拡散も起きやすい
記録性
送受信は常に記録が残る。アクセス元・時刻・見たページ
公開された情報は記録・蓄積・検索・複製・伝達され、完全な消去は難しい
匿名で投稿しても、記録から本人は特定できる

※ 記録は悪いことだけではない。検索履歴や購入履歴から、自分に合った情報や広告が出る(アクセス記録の活用)。そのぶん、見せたくないものも記録されている

教師用メモ

目標 01。第1単元の残存性・複製性(第1回)と、匿名でも特定される(第4回)をここで結ぶ。

SECTION 02

実名と匿名

必要性と危険性を比べて、場面で選ぶ

左は名札をつけて堂々と話す高校生、右は仮面をつけて自由に話す高校生。二人の間に天秤
体験 02

実名の得失、匿名の得失

下の 8 つを 4 つに分ける。まず上で付ける印を選び、次にその印を付けるものを押す。全部に印を付けたら「答え合わせ」

実名の良い点実名の危険匿名の良い点匿名の危険
教師用メモ

進め方(6分) 3 分で答え合わせ。そのあと「自分なら、どんな場面で実名、どんな場面で匿名?」を隣と 1 分。教科書: 実名を出すこと、出さないことは、必要性と危険性を比較して慎重に判断する。

フリマアプリのように、業者が仲介して匿名のまま取り引きできる仕組み(エスクロー)も匿名の活用例。

体験 02

この場面、何で伝える | 家族に謝る

けんかをして、家族に謝りたい。今日は帰りが遅く、直接は会えない。どれで伝える? 前回の 2 つの軸と、今日の記録性を思い出して選ぶ

みんなの選択
教師用メモ

正解はない。「メッセージは残るから、あとで読み返してもらえる」「声のほうが気持ちが伝わる」の両方が出る。目標 02。感情を伝える場面では、記録性がプラスにもマイナスにもなる。

SECTION 03

消せるか

10 年前の記事を、検索結果から消してほしい

一つの投稿が次々に転送されて、たくさんに増えて広がっていく様子
体験 03

忘れられる権利 | 検索結果から消してよいか

実際にあった裁判。ある人が、10 年以上前の自分の借金に関する新聞記事が検索結果に出続けるのを、消してほしいと訴えた。記事そのものは事実で、新聞社のサイトには残る。検索結果から外すことを認めるべきか。理由をつけて送る

立場
理由
立場と理由
教師用メモ

進め方(10分) 一人で 4 分。立場ごとに理由が並ぶ。答えは出さない。EU の裁判所は 2014 年に「忘れられる権利」を認めた(教科書コラム)。日本では認められにくい。

拾いたい発言 「事実なら残すべき」vs「昔のことで今も不利になる」。「新聞社のサイトには残るのに、検索から消す意味は?」→ 記録性の中でも「見つけやすさ」が力を持つ、という気づき。

「認める」側の人に「政治家の過去の不祥事も消してよい?」と聞くと、条件つきに動く。公共性という軸が出れば十分。目標 03。

まとめ 03

消えない前提で、出す前に考える | それでも社会は線を引き直している

消せない一度公開された情報は、記録・蓄積・検索・複製・伝達され、完全に消去することは難しい。軽い気持ちの冗談や写真が、時間がたってから見つかる
忘れられる権利過去の情報を検索結果から外す権利。EU で 2014 年に認められた。事実の記録を残す価値と、個人が過去に縛られない価値のジレンマ
フェイクニュースニュースに見せかけた意図的なうそ。同じ意見の人が集まる場で意見が極端になる(サイバーカスケード)ことで広がる。異なる意見の人とどう話すかが課題

匿名でも記録は残り、消せない。だから出す前に考える。同時に、社会の側も権利の線を引き直し続けている

教師用メモ

ディープフェイク(AI で顔や声を差し替える)にも一言。記録が「本物かどうか」まで揺れる時代であることを添える。

道具で確かめる

文字だけで落ちるものを、自分で確かめる

文字だけの場合とそれ以外を比べ、落ちるものをノートに書く

情報やメディアの特性同じ内容が、伝え方によってどう変わるかを見る
  1. 「この枚で開く」を押す
  2. 文字だけの場合と、それ以外を比べる
  3. 落ちてしまう情報を 1 つ挙げる
この授業のページの中で開く。終わったら「閉じてこの枚に戻る」で戻る

※ この枚は提出しない。自分の手で確かめて、分かったことをノートに書く

教師用メモ

進め方 提出させない枚。手を動かして確かめるところまで。机間指導で、止まっている生徒だけを見る。

5分。誤解が起きた例を 1 つ全体で共有する。

道具は外で公開されている Web アプリ。この授業のページの中で開くので、別のページへは移らない。閉じれば、そのままこの枚に戻る。ブラウザの中で動き、入力はこの授業のサーバーには送られない。

今日のまとめ

3つの目標に、この教室で起きたことで答える

01
匿名性と記録性 名前を出さずに書けた。書き方が率直になった。でも、投影には端末と時刻が全部残っていた
02
実名と匿名 責任と深い交流 vs 自由な発言と内部告発。危険もそれぞれ。必要性と危険性を比べて場面で選ぶ
03
消せるか 完全な消去は難しい。忘れられる権利は、記録の価値と個人の未来のジレンマ。根拠をつけて立場を述べた
自己評価

今日の目標、自分はどこまで

3 つの目標それぞれに、できた/だいたい/まだ、を 1 つ選ぶ。右の帯にクラス全体の分布が出る

今日の目標、自分はどこまで | 1 つずつ選ぶ
01匿名性と記録性を自分の例で説明できる
02実名と匿名の得失を比べ、場面に応じて判断できる
03忘れられる権利について根拠をつけて立場を述べられる
できただいたいまだ
教師用メモ

1 分。「まだ」が多い目標は、次回の冒頭で拾い直す。

ふりかえり

記録が残ると知って、自分の発信で変えること

一文でよい。今日の体験のどれかに触れて、自分の行動として書く

みんなの行動
教師用メモ

3 分。次回からデジタルの仕組み(0 と 1)に入る。「記録が残る」の中身が 0 と 1 であることを予告してよい。