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小学校 5・6年「情報とコンピュータ」 | 単元設計
逆算で設計する(高次の資質・能力 → 単元の目標・評価規準 → 評価課題 → 学習過程 → 形成的評価)。 根拠は三つ。小学校学習指導要領(平成29年告示)と「小学校プログラミング教育の手引」、日本学術会議「情報教育課程の設計指針 第2版」の小学校段階、中央教育審議会 情報・技術WG の要点。本文の [総則][手引][指針][WG] は、下の出典の該当箇所を指す。
この単元の位置
小学校には「情報」の教科がない。[総則]は情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」とし、各教科等の特質を生かして教科等横断的に育てるとする。[指針]の小学校段階の記述も同じで、「国語・算数・理科・社会科・生活科・道徳・総合的な学習の時間で分担して情報教育の内容を取り扱う」が、「その一部は『情報の領域(仮称)』などで情報を中心とした扱いも可能」としている。[WG 要点 1]は「小学校の情報の領域」を核の一つに置く方向を示す。
この単元は、その「情報を中心とした扱い」を 5・6年の総合的な学習の時間を中心に 8 回(1回 45 分) でひとつづきにしたもの。各教科に散っている内容を、ここで一度つなげて名前を付ける。算数(正多角形)や理科(電気の利用)で行うプログラミングと重ねて実施してもよい。中学校 技術分野「D 情報の技術」(中学校版の単元設計)へ、そのまま続く。
本質的な問い
コンピュータは言われたとおりにしか動かない。では何を言えばいいのか。届いた言葉は、ほんとうか。
前半が[指針 A2L1]「コンピュータが『自動的に情報を処理する装置』であること、その処理内容は人工言語や自然言語で指示すること」、後半が[指針 A1L1]「間違った情報も存在すること」と[H1L1]「デマ/フェイク/悪意ある情報に対応する必要性」。8 回はこの 2 つの問いを往復する。
単元の目標(3観点)
| 観点 | 単元の目標 | 根拠 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 情報は人もコンピュータも作り、間違ったものもあると分かる。コンピュータは指示で動く装置で、順番・くり返し・分岐で動きを書けると分かる。ネットワークでつながると一瞬で広がり、消えないことを知る。表やグラフで数を整理できる | [指針]A1L1・A1L2・A2L1・A3L1・F1L1・F2L1・D3L1(すべて小情) |
| 思考・判断・表現 | 目当てを、コンピュータが分かる手順に分けて書ける。届いた情報を「ほんとうかな」と立ち止まって確かめる方法を選べる。集めた数から、言えることを一つ言える | [総則]プログラミング的思考、[手引]「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要か…論理的に考えていく力」、[指針]I1L1・I3L1・H4L3 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 立ち止まる・考える・尋ねる、を自分の使い方で実行しようとする。相手の望みは自分と違うと知って、グループで協力しようとする | [指針]H4L1・G4L1・G5L1・H3L1(小般) |
評価課題(単元末のパフォーマンス課題)
「学校のだれかの『こまった』を、コンピュータで助けるアイデアを 1 枚にして、伝え合う」(第8回)
- ペアか 3 人で、学校の中の「こまっている人」を一人決める(低学年、先生、給食室、図書室、など)。何にこまっているかを一文で書く
- その人を助けるために、コンピュータに「何を、どんな順番で」させるかを、カードで 3〜5 手に分けて書く(第2・3回で作った手順の書き方)
- 「ほんとうに助かるか」を、その人になったつもりで一度考える(第6回の「立ち止まる」)。数で確かめられるところがあれば、数を出す(第7回)
- 1 枚を教室ページの共有部品で出し、全員が見て、よいところを一つずつ言う
| 観点 | B(おおむね満足) | A(十分満足) | C の子への手立て |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | こまっている人と、コンピュータにさせることを、手順に分けて書いている | 手順の中に「くり返し」か「もし〜なら」を使い、なぜそこで要るかを言える | 第3回のカード(端末に残る)を開かせ、「まず何をする」だけ決めさせる |
| 思考・判断・表現 | その人の立場で「助かるか」を一度考え、直した点がある | 助からない場合を予想して、二つ目の案か直し方を書いている | 「その人は、それをもらったら何と言うか」を口で言わせてから書かせる |
| 態度 | 友だちの 1 枚に、よいところを一つ言っている | 自分の 1 枚を、友だちの言葉をもとに直そうとしている | 見る観点を一つに絞って(「順番は分かるか」)言わせる |
規準は[指針]F2L1(一連の動作を連ねる形のプログラムをコメントつきで構築できる)、G4L1(自分の望みと相手の望みは一致しないと認識できる)、G5L1(他のメンバーと協力できる)を、小学校の評価の言葉に直したもの。C の列は、教科書の評価規準例が B・A・C↑ で書かれているのに揃えた(高校の単元と同じ形)。
各回と評価(形成的評価の場面)
各回のページには、表紙の教師用メモに「この回の評価」を、ふりかえりの枚に「目標の自己評価」(子どもが 3 段階で答え、投影に分布が出る)を置く。分布は次回冒頭で「まだ」の多かった目標を拾い直すのに使う。
| 回 | 題 | [指針]の水準 | [総則][手引]・教科との関連 | 重点 | 評価場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | じょうほうって、何だろう | A1L1(人もコンピュータも作る。間違った情報もある)、A1L2(書き記して記録・表現できる) | 国語(伝え合う)。[指針]「A1L1、A1L2は…国語で読み書きを学ぶ中で体験的に」 | 知 | 言葉だけで絵を伝える体験の、伝わった・伝わらなかった理由 |
| 2 | コンピュータは指示で動く | A2L1(自動的に処理する装置。人工言語や自然言語で指示)、F1L1(対象物がプログラムで動いていると認識し説明できる) | [手引]「身近な生活でコンピュータが活用されていること」に気付く(C 分類の入口)。[指針]「A2L1は、プログラミングの導入時に扱う」 | 知・思 | 人間ロボットへの指示が曖昧で失敗する体験/身のまわりの「プログラムで動くもの」 |
| 3 | じゅんじょ・くりかえし・じょうけん | F2L1(一連の動作を連ねる形のプログラムをコメントつきで構築)、I1L1(重複/抜けなく場合分け、筋道を立てて判断) | [総則]プログラミング的思考。[手引]A 分類「算数 第5学年 正多角形」と重ねて実施できる | 思 | カードで手順を組んで正多角形を描く/くり返しで短くなる |
| 4 | つながっている | A3L1(ネットワークの存在と働き、その上のコミュニケーションの特性)、G1L1(公/共/私の階層)、H1L1(日常感覚を超えた速さ/広がり) | 社会(情報産業)。[指針]「A3L1…コミュニケーションの体験」 | 知・態 | 教室コードで送った一言が全員に一瞬で届き、消せないことを見る |
| 5 | じぶんとみんなを守る | A4L1・A4L2(安全の意識、マルウェア・不正アクセスの基本)、H4L1(立ち止まる・考える・尋ねる)、H4L2(デジタル足跡) | 道徳・総合。[指針]「H4L1〜L4は、総合的な学習の時間などで、学齢を考え複数回に分けて」 | 思・態 | 「これ、押す?」の判断を仕分ける/自分の約束を一つ決める |
| 6 | ほんとうかな | H1L1(デマ/フェイクに対応する必要性)、I3L1(主観と客観の区別)、X2L1(AI が作ったものは区別しづらい)、X3L1(人がやることと AI がやることの違い) | 国語(事実と意見)。[指針]「X2L1は、国語で文章読解の一部として、生成 AI 等の実例を示して」 | 思 | 本物・作り物を当てて外れる体験/確かめ方を 3 つ選ぶ |
| 7 | 表とグラフで数を見る | D3L1(表やグラフでデータを整理し特徴を検討)、B5L1(見やすく、読み間違いしにくく作る配置・配色) | 算数(データの活用)。[指針]「D3L1は、総合的な学習の時間や算数を中心に」 | 知・思 | 教室の回答が棒グラフになるのを見て、言えることを一つ言う |
| 8 | 作って伝える | B1L1(整理が学びや創造に影響)、B4L1(記録を保存し取り出す)、G5L1(協力)、G4L1(相手の望み) | 総合(探究的な学習の過程)。単元末の評価課題 | 思・態 | 1 枚の提案と、よいところを一つ言い合う |
小学校の回だけの決まり(高校・中学校の回と違うところ)
- 1 回 45 分。時間配分は 扉・目標 3 分 / 体験 1 と 2 で 30 分 / まとめ・ふりかえり 12 分。説明の枚を減らし、体で動く体験を先に置く([指針]「小学校では体験を中心とし、中学校で原理や…」)
- 言葉は 5・6年の配当漢字の範囲に寄せ、それ以外はひらがなか( )で読みを付ける。カタカナ語は「コンピュータ」「プログラム」「インターネット」「データ」「グラフ」に限る
- 端末の操作は「押す」「選ぶ」「一言送る」だけ。文字入力は 20 字まで。教室コードは教師が入れて、QR で配る
- 図は「見て分かる」ものだけ。文字の多い図は置かない
- 家庭や本人の情報は集めない。教室コードで集まる一言に、名前・住所・家の話は書かせない(第4・5回の中身そのもの)
- 予習・復習のページも同じ言葉の水準で書く。予習は「やってみる」を家の人と話す形にしてもよい。復習の「探究へ」は「総合的な学習の時間で、こまっている人を見つけるとき」に向けて書く
中学校・高校へつなぐ場所
| この単元で置いたもの | 中学校 技術分野で | 高校 情報Ⅰで |
|---|---|---|
| 順番・くり返し・もし〜なら(第3回) | D(3) 計測・制御のプログラミング(中学校版 第6〜8回) | (3) アルゴリズムとプログラミング |
| 一瞬で届き、消えない(第4回) | D(1) 情報の技術の特性、情報セキュリティ | (1) 情報の特性、(4) ネットワーク |
| 立ち止まる・考える・尋ねる(第5回) | 情報モラル・セキュリティ(第4・5回) | (1) 情報モラルと法、個人情報 |
| ほんとうかな(第6回) | メディアリテラシー(第5回) | (1) 本物・偽物の判断、(2) メディアの特性 |
| 表とグラフ(第7回) | D(2) データの活用(第9回) | (4) データの活用 |
WG の要点と、この単元
- 「小学校の情報の領域、中学校の情報・技術科、高等学校の情報科を核として体系的に育成」(要点 1)→ この単元を小学校の「核」の候補として、中学校版・高校版と同じ仕組み(設計 → 各回 → 予習・復習)で置いた
- 「プログラミング的思考を、手順・コード中心から目的・価値・責任・評価改善を含む課題解決全体へ」(要点 5)→ 第3回で手順を作り、第8回で「だれのこまったを助けるか」から作る
- 「メディアリテラシー、AI、情報モラルは情報技術の適切な取扱いとして明確化」(要点 6)→ 第5・6回を独立して置いた。AI が作ったものが混ざる世界を、小学校の言葉で
- 「逆算し、教科書の見開きを毎時消化する方式から離れる」(要点 7)→ この文書の順序そのもの
WG は 2026年6月の第11回までを参照した。審議中の内容なので、この単元は現行の学習指導要領(平成29年告示)の総合的な学習の時間と各教科の枠で実施できる形で書いてある。
生徒の探究とのつながり
小学校の総合的な学習の時間は、それ自体が探究的な学習の過程(課題の設定 → 情報の収集 → 整理・分析 → まとめ・表現)でできている。この単元の 8 回は、その過程で探究で使う道具を先に一つずつ渡すもの。
- 第2・3回の「手順に分ける」は、調べる計画を立てるときの道具。第6回の「ほんとうかな」は情報の収集、第7回の「表とグラフ」は整理・分析、第8回の「1 枚にして伝える」はまとめ・表現の道具
- 各回の復習の最後「探究へ」で、その回の道具を「自分の総合の時間のどこで使うか」を一言書く。書いたものは端末の中の 探究ノート に集まる。サーバには送らない
- 第8回の評価課題は、探究の小さな一周そのもの。ここで一度通した「こまっている人 → 助ける手順 → 相手の立場で確かめる → 伝え合う」を、総合の本番でもう一度使う
他校でそのまま使える形にする
学校固有の呼び名や、校内で使っている道具の名前は書かない。教室コードで集まる部品は、どの学校でもこのページだけで動く。
出典
小学校学習指導要領(平成29年告示)と、小学校プログラミング教育の手引
- 文部科学省。小学校学習指導要領(平成29年告示)と解説の一覧、平成29・30・31年改訂 学習指導要領(本文、解説)
- 該当箇所: 総則 第2の2(1)「情報活用能力(情報モラルを含む。)」を学習の基盤となる資質・能力として教科等横断的に育成すること。第3の1(3)「児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」
- 小学校プログラミング教育の手引。「プログラミング的思考」の定義、学習活動の分類(A: 学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの。算数 第5学年 正多角形、理科 第6学年 電気の利用など。B・C: 各教科等・教育課程内で各教科等とは別に実施するもの)
- 中学校側は 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説の一覧(技術・家庭編)。中学校版の単元設計
情報教育課程の設計指針 − 初等教育から高等教育まで(第2版)
- 日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会 報告、令和8年(2026年)5月12日。報告本文(PDF)、情報処理学会の紹介ページ
- 使った箇所: 各カテゴリの項目と水準の表のうち (小情)(小学校で情報教育として扱う水準)と (小般)(小学校で一般的に扱う水準)の項目、「学校段階ごとの扱い」の小学校の記述、「小学校段階」の節(各教科での分担と「情報の領域(仮称)」、体験中心、文字入力の習得)
- 表記: A2L1 は カテゴリ A の項目 2「コンピュータの基本原理」の水準 1
中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ
- 文部科学省。会議のページ(議事録・配付資料)、第11回 配付資料(2026年6月25日)
- 第1回(2025年9月25日)から第11回までの資料を読んでまとめた 7 つの要点のうち、1・5・6・7 を使った。審議中のため、方向として参照し、実施は現行の指導要領に合わせる