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単元 (1) 情報社会の問題解決 | 単元設計
逆算で設計する(高次の資質・能力 → 単元の目標・評価規準 → 評価課題 → 学習過程 → 形成的評価)。 この順序は 情報・技術WG の要点 7 による。中身の根拠は四つで、役割が違う。本文の [解説][規準例][指針][WG] は、下の出典の該当箇所を指す。
四つの根拠と、この設計での役割
| 根拠 | 何を決めるか | この単元でどう使ったか |
|---|---|---|
| 学習指導要領と解説 情報編(法令上の基準) | 何を身に付けさせるか(内容ア・イ)と、扱い方(内容の取扱い) | 単元の目標・各回の対応・評価課題の根拠。(1) は「導入として位置付け、(2)〜(4) との関連に配慮」なので、後の単元へつなぐ場所を明記した |
| 教科書の評価規準例(指導用資料。東京書籍『新編情報Ⅰ』第1章 全10節) | 節ごとの評価規準と、B・A・C↑(Cの生徒への手立て)の書き方 | 各回の「この回の評価」の起点。A 水準の文言を、そのまま A の見取りに使う。ただし見開きを毎時消化はしない([WG 7])。第7回で 8・9節をまとめ、空いた2回を単元末の評価課題に充てた |
| 情報教育課程の設計指針 第2版(日本学術会議) | 到達水準の目盛り。カテゴリ・項目・水準を「H2L2」の形で示し、(高必)=高校必履修で扱う水準を指定する | 各回で「知っている/できる/決められる」のどこまでを狙うかを、指針の水準で言い切る。指針が (中情) とする水準は前提として確認し、(高必) に進む |
| 情報・技術WG のまとめ(中央教育審議会。審議中) | 次期改訂の方向。高次の資質・能力、PBL による統合、AI・情報モラルの明確化、逆算設計 | 設計の順序と、第9・10回を PBL にした理由。審議中なので、現行の指導要領のもとで実施できる形で書く |
本質的な問い
情報は形がなく、消えず、増え、広がる。その社会で、自分は何をどう決めるのか。
[解説]の (1) 冒頭「情報と情報技術を活用した問題の発見・解決の方法に着目し、情報社会の問題を発見・解決する活動を通して」を、生徒が自分に向けて問える形にしたもの。
単元の目標(3観点)
| 観点 | 単元の目標 | 根拠 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 情報とメディアの特性、問題解決の流れ、法規・制度(知的財産・個人情報・不正アクセス)、情報セキュリティの3要素(機密性・完全性・可用性)、情報技術が社会に果たす役割と影響を、自分の言葉で説明できる | [解説 ア(ア)(イ)(ウ)]。3要素は[解説]が (4) との関連で「重要性」を求める箇所 |
| 思考・判断・表現 | 身近な問題を理想と現実のギャップとして捉え、根拠をもって解決策を選び、他者の評価をもとに改善できる。法規やマナーの意義を「背景を科学的に捉え」て判断できる | [解説 イ(ア)(イ)(ウ)]。「背景を科学的に捉え、考察する」は イ(イ) の文言 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 情報モラルに配慮して情報社会に主体的に参画しようとし、自分の判断を振り返って改善しようとしている | [解説](1) の「情報モラルなどに配慮して情報社会に主体的に参画し、その発展に寄与しようとする態度」 |
[解説 内容の取扱い (2)]: 「この科目の導入として位置付け、(2) から (4) までとの関連に配慮する。アの(イ)(ウ)、イの(イ)(ウ)については、生徒が情報社会の問題を主体的に発見し明確化し、解決策を考える活動を取り入れる」。後半の活動が第9・10回、前半の「関連への配慮」は下の表で場所を決めた。
後の単元へつなぐ場所(解説が求める「(2)〜(4) との関連」)
| 解説が (1) で触れさせることを求める事項 | この単元の場所 | つながる単元 |
|---|---|---|
| ユニバーサルデザイン・ユーザビリティ・アクセシビリティ | 第8回「使えない人がいる社会」の問い | (2) 情報デザイン |
| 情報機器やサービスがプログラムで制御されていること | 第7回 セルフレジ・電子マネーの仕組み | (3) プログラミング |
| 数値やグラフの選び方で印象が変わること | 第8回「グラフの偏りを見抜く」 | (4) データの活用 |
| 情報セキュリティの3要素と、その確保の技術 | 第5回で3要素を名づける。技術は扱わない | (4) 情報通信ネットワーク |
| 中学校 技術分野「D 情報の技術」で学んだ情報モラル・セキュリティ | 第3〜5回は「中学校で聞いた」を前提に、法の背景と限界へ進む | 中学校版の単元設計 |
| 公民科など他教科との関連 | 第3回 法が追いつかない例、第6回 知的財産 | 公民科(法・権利) |
評価課題(単元末のパフォーマンス課題)
「身のまわりの情報社会の問題を一つ見つけ、調べて、解決策を提案する」(第9回・第10回)
- 個人またはペアで、学校や地域の情報に関わる問題(SNS の使い方、学校の連絡手段、情報機器の使えない人、など)を理想と現実のギャップとして定義する。題材の例は[解説]が挙げる「生徒会活動・図書館・商店街・SNS 講座・未来の情報機器」に合わせた
- 根拠(自分たちの調査・公開データ)をもとに、解決策を2つ以上出して比べ、1つ選ぶ。発散と収束を両方使わせるのは[指針 K1L3](収束的/発散的手法の実践。高必)
- 1枚の提案(教室ページの共有部品で提出)を全員が見て、相互評価する。集団の前で目的と進め方を示すのは[指針 G3L3](高必)。評価の観点は下の規準
| 観点 | B(おおむね満足) | A(十分満足) | C の生徒への手立て |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 問題を理想と現実のギャップで書き、情報の特性や法規のどれに関わるかを示している | 関わる特性・法規・技術を複数挙げ、解決策との関係を説明している | 第2回のワークシート(端末に残る)を開かせ、5ステップのどこで止まったかを一緒に指す |
| 思考・判断・表現 | 解決策を2つ以上出し、根拠を示して1つ選んでいる | 選ばなかった案の結果も予想し、選んだ理由を比較で示している | 「もし何もしなかったら」を先に書かせ、そこからの差で案を比べさせる |
| 態度 | 相互評価を受けて提案を直している | 直した点と理由をふりかえりに書き、次に生かすことを挙げている | 受けた評価のうち1つだけ選ばせ、「どこを直すか」を1行で決めさせる |
規準は[規準例 2]問題解決の流れ の A 水準「次の問題解決に生かすにはどうしたらよいかを考える」と、[指針 K2L2](結果を評価し反復改善。高必)・[指針 K4L1](自分の問題に対し記述/説明/分析/解の検討。高必)を合わせた。C↑ の列を置くのは、教科書の評価規準例が B・A・C↑ の三段で書かれているのに揃えるため。
各回と評価(形成的評価の場面)
各回のページには、表紙の教師用メモに「この回の評価」を、ふりかえりの枚に「目標の自己評価」(生徒が3段階で答え、投影に分布が出る)を置く。 自己評価の分布は、次回冒頭で「まだ」の多かった目標を拾い直すために使う。
| 回 | 題 | [解説] | [規準例]の節 | [指針]の水準 | 重点 | 評価場面 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 情報とは何か | ア(ア)。情報と「もの」の比較 | 1 情報とメディアの特性 | H1L1(速さ/広がり)→ G1L3 の入口 | 知 | 言語活動(特性を操作と結びつける)/ふりかえり |
| 2 | 問題解決の流れ | ア(ア) イ(ア) | 2 問題解決の流れ、3 発想法 | K2L1 → K2L2、K1L3(発散と収束) | 思 | 5ステップのワークシート(端末に残る)/ふりかえり |
| 3 | 情報モラルと法 | ア(イ) イ(イ)「背景を科学的に捉え」 | 4 情報モラル(法律が社会の変化に対応できていない例) | H1L2、H3L2 | 思 | 自由の範囲(境目の一組)/法律が追いつかない例 |
| 4 | 個人情報の漏れ方 | ア(イ) イ(イ)。個人データの例外的な第三者提供 | 5 個人情報の流出(特定される仕組み) | H1L2、H3L3(ジレンマ)、H4L2(デジタル足跡) | 知・態 | 特定の推理(集約)/設定の見直し(端末に残る) |
| 5 | ネット上の加害と被害 | ア(イ)。サイバー犯罪の原因と対策、ソーシャルエンジニアリング、3要素 | 6 傷つかない傷つけないために(パスワードを考え検証) | H2L2・H2L3(編集の意図・印象操作を見抜く)、H5L2 | 思 | 本物・偽物の判断/パスワードの検証/言い換え |
| 6 | 知的財産権 | ア(イ) イ(イ) | 7 知的財産権(保護と例外規定) | H1L2 | 知・思 | 「著作権がなかったら」/侵害か例外かの分類 |
| 7 | 情報技術の発展と生活の変化 | ア(ウ) イ(ウ)。電子マネー・IC カード・セルフレジ、AI・ロボットと仕事 | 8 情報技術の発展、9 情報化と私たちの生活の変化 | H5L1、X1L3、X3L2 | 知・思 | 昔と今/AI に任せる仕事と人の仕事 |
| 8 | よりよい情報社会へ | ア(ウ) イ(ウ)。サイバー犯罪の対策、UD、グラフの選び方 | 10 よりよい情報社会へ(サイバー犯罪の対策) | H3L4、H5L2 | 思・態 | サイバー犯罪の対策/グラフの偏りを見抜く |
| 9 | 問題の発見と調査 | 内容の取扱い (2) | 2 の A 水準 | K1L2、K3L1、K4L1 | 思 | 問題の定義と調査計画(共有) |
| 10 | 解決策の提案と相互評価 | 内容の取扱い (2) | 2 の A 水準、3 発想法 | K2L2、G3L3、G4L3 | 思・態 | 提案の相互評価/改善したふりかえり |
第7回で[規準例]の 8・9 節を一回にまとめた。9 節の思考の規準「ネット依存になっていないか考える」は、第7回の「昔と今」で自分の使い方を数える活動に含めた。
設計指針(第2版)との対応
指針の表記は「カテゴリ・項目・水準」。たとえば H2L2 は、カテゴリ H の項目 2「情報と意図」の水準 2。末尾の (高必) は高校の必履修科目で扱う水準、(中情) は中学校の情報の内容で扱う水準を指す。
- H. 情報社会/メディアと倫理/法/制度: 指針は、高校必履修で「情報倫理/メディアリテラシーの内容において中心的なもの」として H2L2・H2L3・H3L4 を挙げる。H2L2「メディア情報は編集する人の意図で選別/編集される」と H2L3「情報操作/印象操作を認識できる」は第5回の本物・偽物の判断で、H3L4「情報や金銭の動きを理解し、法的/道徳的/組織的に適切に振る舞う方法を考えられる」は第8回で扱う。H1L2(知的財産・個人情報・サイバー犯罪の基本と知識更新。中情)と H3L3(ジレンマの認識。中情)は中学校の水準なので、第3・4・6回では前提として確かめてから高校の水準へ進む
- K. 問題発見/問題解決: 指針は K1L2・K1L3・K2L2・K3L1・K4L1 を「必履修科目の中で問題解決の一環として実践を通じ扱う」とする。第2回で流れを一度通し、第9・10回で自分の問題に実践する。K1L3 の収束的/発散的手法は「生徒の状況に応じて適切なものを選び実践する」とあるので、発想法は固定しない
- G. コミュニケーションとメディアおよび協調作業: G1L3(メディア・情報デザインの要因と影響。高必)は第1回が入口で、本格的には (2) で扱う。G3L3(共同作業の目的や進め方を集団の前でプレゼンテーション)と G4L3(相手の発言が自分の望みと違う時にも相手の立場を理解できる)は第10回の相互評価がその場面。教室全体の回答が集まる部品は、集団の文脈をそのまま体験させる仕掛け
- X. 人工知能(AI): 高校必履修の X1L3(AI でできることと、データの量/匿名性/偏りの問題、社会的影響)と X3L2(信頼性/公平性/透明性/個人情報保護/責任)を第7回で知識として扱う。指針が同じ箇所で求める「実際に手を動かして認識プログラムや説明文などを生成させる」経験は、この単元では置かず (2)(3) の単元で扱う
WG の要点と、この単元
- 「知識・技能の習得にとどまらず、実際の課題解決で活用できる高次の資質・能力」(要点 2)→ 単元末を知識テストではなく提案の相互評価にした
- 「生活や社会を情報の観点から捉え、情報技術で問題解決」(要点 3)→ 評価課題の題材を学校・地域に限った
- 「情報Ⅰは基盤理解から……PBL による統合へ」(要点 4)→ (1) を導入として置きつつ、第9・10回を小さな PBL にして (2)〜(4) の単元末 PBL の練習にする
- 「メディアリテラシー、AI、情報モラルは情報技術の適切な取扱いとして明確化」(要点 6)→ 第5回・第7回を独立させた
- 「逆算し、教科書の見開きを毎時消化する方式から離れる」(要点 7)→ この文書の順序そのもの。教科書の節の順は守るが、1節=1回にはしない
WG は 2026年6月の第11回までを参照した。審議中の内容なので、この単元は現行の学習指導要領(平成30年告示)のもとで実施できる形で書いてある。
生徒の探究とのつながり
この単元で身に付ける「問題を理想と現実のギャップで書く」「根拠をもとに解決策を比べて選ぶ」「相手の評価で直す」は、そのまま総合的な探究の時間や課題研究の道具になる。授業の側からは、次の三つでつなぐ。
- 各回に 予習(授業の前に 10 分。問いを持って来る)と 復習(授業の後に 15 分。確認問題と、一つ書く)のページを置く。復習の最後は必ず「探究へ」で、その回の考え方を自分の探究のどこで使うかをメモする
- 「探究へ」のメモは端末の中の 探究ノート に集まる。探究のテーマ決めや、調べ方・見せ方に迷ったときに開いて、自分の言葉を読み返す。サーバには送らない
- 第9・10回の評価課題は、探究の小さな一周(問題の定義 → 調査 → 提案 → 相互評価 → 改善)そのもの。ここで一度通した手順を、探究の本番で「もう一度」使う
他校でそのまま使える形にする
学校固有の呼び名や、校内で使っている道具の名前は書かない。教室コードで集まる部品は、どの学校でもこのページだけで動く。
出典
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編
- 文部科学省。解説 情報編(PDF)、高等学校学習指導要領の告示・解説の一覧
- 該当箇所: 第2章 第1節 情報Ⅰ 「2 内容とその取扱い」の (1) 情報社会の問題解決(ア(ア)(イ)(ウ)、イ(ア)(イ)(ウ))と、「3 内容の取扱い」の (2)。第1章の「6 中学校技術・家庭科技術分野等との関係」も参照した
- 中学校側は 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説の一覧(技術・家庭編、技術分野「D 情報の技術」)。小学校側は 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説の一覧 と 小学校版の単元設計
教科書の評価規準例(指導用資料)
- 東京書籍『新編情報Ⅰ』(教科書番号 情Ⅰ 002-901)の指導用資料「評価規準例」。教科書の紹介ページ
- 第1章 全10節(情報とメディアの特性/問題解決の流れ/発想法/情報モラル/個人情報の流出/傷つかない傷つけないために/知的財産権/情報技術の発展/情報化と私たちの生活の変化/よりよい情報社会へ)。各節に 知・思・態 の評価規準、評価方法、B・A・C↑ が示されている
- 指導用資料は採用校に配布されるもので、本文はこのページに転記しない。上の表の節名と水準の使い方だけを示した
情報教育課程の設計指針 − 初等教育から高等教育まで(第2版)
- 日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会 報告、令和8年(2026年)5月12日。報告本文(PDF)、情報処理学会の紹介ページ
- 使った箇所: 「(2) カテゴリ」の一覧(A〜K、X)、各カテゴリの項目と水準の表(G・H・K・X)、「学校段階ごとの扱い」の高等学校の記述
- 第1版(令和2年9月25日)は 報告本文(PDF)。第2版で X. 人工知能 が加わった
中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ
- 文部科学省。会議のページ(議事録・配付資料)、第11回 配付資料(2026年6月25日)
- 第1回(2025年9月25日)から第11回までの資料を読んで、7つの要点にまとめたものを使った。要点は上の「WG の要点と、この単元」に番号つきで示した。審議中のため、方向として参照し、実施は現行の指導要領に合わせる