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情報Ⅱ (3) 情報とデータサイエンス | 単元設計
逆算で設計する。根拠は三つ。学習指導要領と解説 情報編の「情報Ⅱ」(3)、情報教育課程の設計指針 第2版の (高選) 水準、情報・技術WG のまとめ。本文の [解説][指針][WG] は、下の出典の該当箇所を指します。
この回の並びのファイル名は lessons/7-01〜7-16 です。情報Ⅱ の 5 単元を 5〜9 に置いているため、(3) は 7 になります。
この単元の位置
[解説]は (3) を「多様かつ大量のデータを活用することの有用性に着目し、データサイエンスの手法によりデータを分析し、その結果を読み取り解釈する活動を通して」と定めています。情報Ⅰ (4) の後半が「集めた数字が何を言えて、何を言えないか」までだったのに対し、ここはモデルを作り、評価し、直す単元です。
[解説]が繰り返し求めるのは、現実のデータを使うことと、モデルの評価と改善を必ず行うことです。内容の取扱い (3) は「イの(イ)については現実のデータの活用に配慮する」「アの(ウ)及びイの(ウ)については、アの(イ)及びイの(イ)で行ったモデル化や処理、解釈・表現の結果を受けて行う」と指定しています。だから第9・10回は、第7・8回で自分たちが作ったモデルを対象にします。
数学科との連携も指定されています(指導計画の作成上の配慮事項)。相関、回帰、確率分布は数学Ⅰ・Bと重なるので、数学で扱う所は数学に任せ、ここでは「目的に合う手法を選ぶ」「結果を評価して直す」に時間を使います。
本質的な問い
データは、未来を言い当てるのではない。どこまでなら言ってよくて、外れたときに何を直すのか。
[解説]が (3) の学習活動として挙げる「ソフトウェアで作成したモデルと比較して、そのモデルにどのような改善が必要であるかを議論する」を、生徒が自分に向けて問える形にしたものです。
単元の目標(3観点)
| 観点 | 単元の目標 | 根拠 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 多様かつ大量のデータの存在とデータ活用の有用性、データサイエンスが社会に果たす役割を説明できる。目的に応じてデータを収集・整理・整形できる。データに基づくモデル化と処理を行い、解釈・表現できる。モデルを評価する意義と方法を説明し、実行できる | [解説 ア(ア)(イ)(ウ)] |
| 思考・判断・表現 | 目的に応じて適切なデータを選べる。将来の現象を予測したり、複数の現象間の関連を明らかにしたりするために、適切なモデル化と処理・解釈・表現を選べる。結果を評価して方法を改善できる | [解説 イ(ア)(イ)(ウ)] |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 外れた予測を隠さず、原因を探して方法を直そうとしている。個人情報を含むデータの扱いに注意しようとしている | [解説](3) の趣旨、内容の取扱い (3)、学習活動の「個人情報が含まれる場合などは、その取扱いに十分に留意する」 |
[解説 内容の取扱い (3)]: 「アの(ア)については、データサイエンスによる人の生活の変化についても扱う。イの(イ)については現実のデータの活用に配慮する。アの(ウ)及びイの(ウ)については、アの(イ)及びイの(イ)で行ったモデル化や処理、解釈・表現の結果を受けて行う」。
評価課題(単元末のパフォーマンス課題)
「現実のデータから予測モデルを作り、評価し、改善案を示す」(第14〜16回)
- 2〜3 人の班で、公開されているデータか自分たちで集めたデータを一つ選びます。[解説]は「生徒自身が収集したデータを基に行うこともできるが、大量のデータを集めることが難しい場合にはオープンデータなどの活用も考えられる」としています
- 目的(何を予測するか、何の関連を調べるか)を決め、収集・整理・整形します。Web ページに載っているデータの整形も、この単元の中身です
- モデルを作り、評価指標で測ります。[解説]は「統計ソフトウェア等をあえて用いずに重回帰分析等のモデルを作成し、その予測モデルに関する評価指標を調べ、ソフトウェアで作成したモデルと比較して、そのモデルにどのような改善が必要であるかを議論する」学習活動を挙げています
- 「このモデルで機械に任せられる判断は何か、任せられない判断は何か」を一つずつ書きます
| 観点 | B(おおむね満足) | A(十分満足) | C の生徒への手立て |
|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 目的に合うデータを選び、欠損や表記ゆれを直して分析できる形にしている | 整形の判断(どれを外し、どれを残したか)と、その理由を記録している | 第4回の整形の手順表(端末に残る)を開かせ、上から順に当てさせる |
| 思考・判断・表現 | モデルを作り、評価指標を一つ示している | 評価指標を根拠に改善案を示し、改善前後を比べている | 「外れた点を 1 つ選び、なぜ外れたか」を先に書かせる |
| 態度 | 予測が外れた点を隠さずに示している | 外れた原因をデータか手法のどちらかに切り分けて説明している | 外れた点を 1 つだけ選ばせ、「データが足りない/手法が合わない」のどちらかを選ばせる |
各回と評価(形成的評価の場面)
| 回 | 題 | [解説] | [指針]の水準 | 重点 | 評価場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 社会の中のデータサイエンス | ア(ア) | D1L4(ビッグデータとデータマイニングの概要。高選) | 知 | 身のまわりの予測の例/ふりかえり |
| 2 | データがもたらした生活の変化 | 取扱い (3)「人の生活の変化」 | D3L3、H5L3 | 知・思 | 変わったことと、失われたこと |
| 3 | データの収集 | ア(ア) イ(ア) | D1L4(データはネットや IoT/センサからも来る) | 技 | 集めたデータの出どころと、集め方の記録 |
| 4 | データの整理と整形 | ア(ア) イ(ア)。学習活動の「データの整理や整形、加工」 | D5L1 → D5L2 | 技 | 欠損・表記ゆれ・型の直し(端末に残る) |
| 5 | 質的データと量的データ | 学習活動「結果として求めている形式に応じて適切な分析手法を選択」 | D3L2 | 知・思 | 手法の選択と理由 |
| 6 | 散布図と相関 | ア(イ) | D5L1 | 思 | 読み取りと、読み取れないことの指摘 |
| 7 | 回帰直線 | ア(イ) イ(イ) | C4L2(系統的に評価値を改良して最適化。高選) | 知・技 | 手で引いた直線と、ずれの合計 |
| 8 | 重回帰による予測 | イ(イ)。学習活動「重回帰分析等のモデルを作成」 | D5L2(実データに対する重回帰/時系列/移動平均/クラスタ。高選) | 技・思 | 重回帰のモデルと、選んだ変数 |
| 9 | モデルの評価指標 | ア(ウ)。取扱い (3) | D5L2 | 知 | 評価指標の値と、その読み方 |
| 10 | 道具のモデルとの比較と改善 | イ(ウ)。学習活動「ソフトウェアで作成したモデルと比較して……改善が必要であるかを議論」 | D5L2、K2L2 | 思 | 比較と、改善案の議論 |
| 11 | 多変量データの可視化 | 学習活動「3変量以上のデータに関して、複数の散布図などを作成」 | D5L2 | 技 | 散布図の並びからの気づき |
| 12 | 変数の絞り込み | 学習活動「データを説明する変数を減らしたり、変数を減らすことによってどのような利点があるか」 | D5L2、E2L3 | 思 | 減らした変数と、減らして良かったこと |
| 13 | クラスタリング | 学習活動「データ同士を比較したり、グループ分けする方法」 | D5L2(クラスタ。高選) | 技・思 | 分けた結果と、分け方の説明 |
| 14 | 手書き文字の認識 | 学習活動「簡単な手書き文字を……画像やピクセルデータ等に変換し、それらの文字を認識する処理」 | X1L4(機械学習等を手元の問題に活用。高選) | 技 | 認識できた/できなかった文字と、その差 |
| 15 | 機械に任せる判断の限界 | 学習活動「人間の判断は必要なくなるのか……討論する」 | X3L2・X3L3 | 思・態 | 討論/自分の線引き |
| 16 | 予測モデルの作成と改善 | イ(ウ)。単元末の課題 | K2L2、G3L3 | 思・態 | 発表と相互評価/改善したモデル |
第14回で扱う手書き文字は、生徒の氏名や個人が分かるものを使いません。[解説]の学習活動が「個人情報が含まれる場合などは、その取扱いに十分に留意することが必要」と述べている通りです。
設計指針(第2版)との対応
- D. データとその扱い: D5L2「実データに対する重回帰/時系列/移動平均/クラスタなどの分析ができる」(高選) が中心です。指針は「情報科の選択科目の中で興味の持てる実データの実習として体験させるのがよい」としており、第8・11〜13回がその形です。D1L4(ビッグデータとデータマイニングの概要、データはネットや IoT/センサからも来る。高選)は第1・3回で、D2L3(データベースやデータ構造による取り扱い。高選)は単元 (4) で扱います
- C. モデル化とシミュレーション/最適化: C4L2「モデルの上で系統的に選択肢を列挙したり評価値を改良したりして最適化が行なえる」(高選) について、指針は「データサイエンスの中で最適化問題としての定式化を行ないできる範囲で解いてみる形で取り入れる」としています。第7回で、ずれの合計を小さくする直線を手で探すのがその入口です
- X. 人工知能(AI): X1L4「機械学習やニューラルネットワーク等を実際に手元の問題に活用することができる」(高選) を第14回で扱います。指針は「実際に認識プログラム等を自分のシステムの中に組み込むことを経験させる」としており、単元 (4) の情報システムに組み込む形へつなげます。X3L2・X3L3(信頼性/公平性/透明性/責任、規制の可能性)は第15回の討論です
- K. 問題発見/問題解決: K2L2(結果を評価し、必要なら反復改善を行える。高必)が、第9・10回と第16回の骨格です
情報Ⅰ とのつながり
| 情報Ⅰ (4) ネットワークとデータの活用 で学んだこと | この単元での広げ方 |
|---|---|
| 尺度、欠損値、外れ値 | 整形の作業として自分の手でやる。判断を記録に残す |
| 相関と因果 | 相関をモデルにする。予測に使い、外れ方を見る |
| グラフの選び方 | 3 変量以上を一度に見る。変数を減らす |
| データで提案する | モデルを評価して改善する所まで行く |
情報Ⅰ (3) コンピュータとプログラミング のプログラムは、ここでは分析の道具として使います。手法の理解が目的なので、ライブラリの使い方の暗記には時間を使いません。
生徒の探究とのつながり
探究でアンケートや計測をすると、必ず「この数字から何が言えるのか」で止まります。この単元は、その先を扱います。
- 第4回の整形、第5回の手法選び、第9回の評価指標は、探究のデータ処理でそのまま使えます。復習の「探究へ」で、自分の探究で集めるデータと、その目的を書き溜めます
- メモは端末の中の 探究ノート に集まります
- [解説]は情報Ⅱ (5) の探究について「数学科など他教科とも積極的に連携を図る」と求めています。この単元で数学の統計と行き来した経験が、その土台になります
他校でそのまま使える形にする
学校固有の呼び名や、校内で使っている道具の名前は書きません。分析の道具は指定せず、「表計算かプログラムのどちらでもできる形」で書きます。
出典
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編
- 文部科学省。解説 情報編(PDF)、高等学校学習指導要領の告示・解説の一覧
- 該当箇所: 第2章 第2節 情報Ⅱ の「2 内容とその取扱い」の (3) 情報とデータサイエンス(ア(ア)(イ)(ウ)、イ(ア)(イ)(ウ))、「(内容の取扱い)」の (3)、(3) の全体にわたる学習活動の例(オープンデータ、質的/量的データ、Web ページのデータの整形、重回帰と評価指標、3変量以上、変数を減らす、手書き文字の認識、人間の判断についての討論)。第3章の指導計画の作成上の配慮事項にある数学科との連携も参照しました
情報教育課程の設計指針 − 初等教育から高等教育まで(第2版)
- 日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会 報告、令和8年(2026年)5月12日。報告本文(PDF)、情報処理学会の紹介ページ
- 使った箇所: カテゴリ C・D・X・K の項目と水準の表、「学校段階ごとの扱い」の高等学校の記述。(高選) は選択科目で学ぶことが望まれる水準の印です
中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ
- 文部科学省。会議のページ、第11回 配付資料(2026年6月25日)
- 使った要点: 「情報Ⅰは基盤理解から情報デザイン、データ分析・モデル化……へ接続」(要点 4)、「AI を情報技術の適切な取扱いとして明確化」(要点 6)。審議中のため方向として参照し、実施は現行の指導要領に合わせます