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問いを立てて確かめる | 中学校の情報学探究 | 単元設計

逆算で設計する(高次の資質・能力 → 単元の目標・評価規準 → 評価課題 → 学習過程 → 形成的評価)。 根拠は五つ。中学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編、同 技術・家庭編「D 情報の技術」、情報教育課程の設計指針 第2版、情報・技術WG のまとめ、そして高校版と小学校版です。本文の [解説][技術][指針][WG][高校] は、下の出典の該当箇所を指します。

この回の並びのファイル名は lessons/n-01〜n-10 です。道具の使い方と、問いの立て方の索引は 情報学探究マニュアル にまとめてあります。

この教材の位置

これは教科ではありません。[解説]が言うとおり、総合的な学習の時間の内容は各学校が定めるもので、決まった教科書はありません。だからこの 10 回は、探究の進め方そのものを一周する足場です。テーマは生徒が決めます。

対象は中学校の総合的な学習の時間と、技術・家庭科 技術分野の課題です。技術分野の D(2)(3) で作ったものを「本当に良くなったのか」まで確かめたいとき、この 10 回がそのまま使えます。A 材料と加工、B 生物育成、C エネルギー変換の課題でも同じです。

高校の探究の進め方 14 回、小学校のふしぎを確かめる 8 回と同じ骨組みですが、中学校で扱う水準に落としてあります(下の高校版から、何を省いたか)。中学校 D 情報の技術の各回の復習は「探究へ」で終わり、そのメモが探究ノートに集まります。この 10 回は、その溜まったメモを開くところから始まります。

本質的な問い

自分が気になっていることを、他の人にも確かめられる形にできるか。

[解説]の第1の目標「探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成する」を、生徒が自分に向けて問える形にしたものです。

高等学校は「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し」と書かれていますが、中学校は違います。[解説]は、小学校・中学校では教師の指導も受けながら課題を設定するとしています。だからこの 10 回では、第2回で教師が題材の場面を 6 つ示し、そこから選ばせる設計にしてあります。ゼロから発見させません。

探究の過程(この 10 回が回すもの)

[解説]は探究的な学習の過程を四つで示し、それが繰り返されるとしています。

過程この教材の回ここで決めること
① 課題の設定第1〜4回気になっていることを選び、問いにし、すでに分かっていることを調べて絞る
② 情報の収集(設計)第5〜7回変える・はかる・そろえるを決め、比べる相手を決め、できるかを見積もる
② 情報の収集(実行)第8回道具を選び、集めて、表にする
③ 整理・分析第9回数で確かめ、言えることと言えないことを分ける
④ まとめ・表現第10回作って、使ってもらい、伝えて、次の問いへ

第9回で「これでは答えられない」と分かったら、①に戻ります。[解説]が言う「探究の過程が繰り返される」のは、ここで起こります。戻ることは失敗ではないと第1回で先に言います。この教材が他と違うのは、②の「設計」に 3 回を使うところです。

技術分野の問題解決と、どう重なるか

[技術]は D(2)(3) の学習を「問題の発見 → 課題の設定 → 解決策の構想 → 制作・実装 → 評価・改善」の流れで示します。探究の四つと、言葉が違うだけで同じ所が多くあります。生徒に両方を別々に覚えさせないため、対応を先に示します。[技術] D(4) でやった「良い面と心配な面を挙げて、どう使うかを決める」の続きが、第10回の「やめ方を決める」です。

[技術]の流れ[解説]の過程この教材の回違うところ
問題の発見① 課題の設定第1・2回技術は「不便」から、探究は「気になる」から入る。どちらでもよい
課題の設定① 課題の設定第3・4回技術は「何を作るか」、探究は「何を確かめるか」。第3回で型を決めると分かれる
解決策の構想② 設計第5〜7回技術は作るものの設計、探究は確かめ方の設計
制作・実装② 実行第8回技術は作品を作る、探究は記録を集める。第10回で合流する
評価・改善③ 分析 → ④ まとめ第9・10回技術は「動いたか」、探究は「数でそう言えるか」まで見る

単元の目標(3観点)

[解説]の第1の目標 (1)(2)(3) を、この 10 回の言葉に直しました。

観点この教材の目標根拠
知識・技能探究の過程の四つを説明でき、自分の問いに必要な調べ方・集め方・確かめ方を選んで使える。探究のよさを自分の言葉で言える[解説 目標 (1)]「課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究的な学習のよさを理解する」
思考・判断・表現実社会や実生活の中から問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現できる[解説 目標 (2)]の文言そのもの
主体的に学習に取り組む態度人と一緒に進め、互いのよさを生かし、積極的に社会に参画しようとしている[解説 目標 (3)]「主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、積極的に社会に参画しようとする態度」

評価課題(この 10 回そのもの)

「自分の問いを立て、自分たちでできる形で確かめ、誰かに使ってもらう」

この教材は全体が評価課題です。まず中学校の 3 観点で見ます。B と A に加えて、C の生徒に教師が何をするかを必ず並べています。「各学校で判断する」では、はじめてこの教材を使う先生が動けないからです。

観点B(おおむね満足)A(十分満足)C の生徒への手立て
知識・技能探究の過程の四つを順に言える。問いの型に合う集め方を一つ選んで使っている選んだ集め方の限界(これでは分からないこと)を一つ言える探究カードの欄を上から読ませ、いま自分がどこにいるかを指ささせる。そこから次の 1 欄だけ埋めさせる
思考・判断・表現問いが「〜は〜か」の形になり、はかるものが決まっているはかるものを、誰が数えても同じ数になる言い方に直している「何を」「どうなったら」の 2 語だけ先に書かせ、教師が問いの形に並べ直して見せる
主体的に学習に取り組む態度計画どおりに進まなかったとき、直した記録がある誰かに一度使ってもらい、その人の言葉を残している探究ノートを開かせ、自分が書いてきたメモを 1 つだけ選ばせる。そこから問い直す

さらに[解説]が示す質の高い探究の二つを、中学校の水準に噛み砕いて使います。他に代えのない、この時間だけの評価軸です。左から 2 列目が、生徒に言うときの言い方です。

高度化(探究の進め方が良くなっているか)

[解説]の語中学校の言い方B(おおむね満足)A(十分満足)C の生徒への手立て
整合性問いと確かめ方が、ちぐはぐでない問いの型と、はかるもの・比べる相手が合っている合わない方法を一度試して、変えた記録がある問いの一文と、はかるものの一文を並べて読み上げさせる。合っていないと気づくのは生徒の側でよい
効果性授業で使った道具を、自分の問いに使えているmicro:bit か easyStat のどちらかを一度使っているなぜその道具を選んだかを言える教師が「はかりたい/差を見たい」のどちらかを一緒に決め、対応する道具の枚を開かせる
(やり切れるか)見積もって、やり切れる形にした5 つの目で見積もり、縮めた所がある縮めても問いに答えられる理由を言える5 つのうち時間の目だけを見させ、1 週間で終わる形に縮めさせる
鋭角性問いが一つに絞れている問いが一文で書けている絞る前と後を並べ、絞った理由を言える書いた問いから「と」「や」でつながった部分を消させ、残った方を問いにする
広角性別の見方があると分かっている「反対のことを言う人もいる」と書けている反対の立場の理由を一つ挙げて答えている「これに困る人はいないか」と一つだけ聞き、答えを書き取らせる

自律化(探究が自分のものになっているか)

[解説]の語中学校の言い方B(おおむね満足)A(十分満足)C の生徒への手立て
自己課題自分に関わりのあることを選んでいるなぜ自分がこれを選んだかを書いている自分のこれからの生き方と結びつけて書いている第2回の 6 つの場面を読み上げ、自分が一度でも困ったものに印をつけさせる
運用自分で進められる計画を立て、遅れたら直している進め方そのものを振り返り、次を変えている締め切りを 1 つだけ決め、その日に「できた/できない」を書かせる
社会参画分かったことを、誰かに返している相手に一度使ってもらい、反応を記録している続けて使える形にし、手順とやめ方まで決めている使ってもらう相手を教師が 1 人指定する。まず 1 人に見せるところまででよい

各回と評価(形成的評価の場面)

各回のページには、表紙の教師用メモに「この回の評価」を、ふりかえりの枚に「目標の自己評価」(生徒が3段階で答え、投影に分布が出る)を置きます。

回題探究の過程[解説][指針]の水準重点評価場面
1探究の進め方の全体像全体第2章 探究的な学習の過程、第3章 目標K2L1(問題発見/解決プロセスを段階を踏んで実行)知探究の過程の並べ替え/気になることの書き出し
2自分が気になっていること①第4章 探究課題。教師の指導も受けながら設定するK1L1(与えられた状況の中から問題を発見/指摘/記述)思・態6 つの場面から 1 つ選び、自分の理由を書く
3問いの形と型①目標 (2)「問いを見いだし、自分で課題を立て」K1L1、I1L2(帰納的/類推的/演繹的な推論)思問いの型(記述・関係・因果)の判別と書き換え
4先行研究の調べ方①目標 (2)「情報を集め」H1L2、I3L1(主観と客観を区別して受け取る)技・態出どころの記録/調べた後の問いの絞り込み
5変えるもの・はかるもの・そろえるもの② 設計目標 (1)「課題に関わる概念を形成し」D4L1、C1L1(身近なものがモデルだと分かる)思変える・はかる・そろえるの 3 つと、数え方の決め方
6比べる相手を決める② 設計目標 (2)。体験活動の重視C3L1(モデルの上で動かして問題を解く)、J2L1思比べる相手の有無の確認と、2 つ作って比べる計画
7実現可能性の見積もり② 設計第5章 内容の取扱い。安全・倫理への配慮H1L2、H3L2(公正な情報発信の倫理的判断)思・態5 つの目での見積もりと、縮めた計画/断りの下書き
8集めて整理する② 実行 → ③目標 (2)「整理・分析して」D4L1(実データを表やグラフにして検討)技集めた件数と、計画とのずれ/表の形
9数で確かめる③目標 (2)D4L2(平均/中央値/度数分布の意味と使い道)思出た数と、そこから言えないことの線引き
10作って使ってもらう④ → ①目標 (3)「積極的に社会に参画しようとする」G3L2、B5L2(伝わるコンテンツを作り評価できる)技・思・態使ってもらった記録/やめ方/次の問い

探究カードが、10 回で育つ

第2回で作る探究カードが、第10回まで引き継がれます。授業ページの ln02-cards のスロットに入り、以降の回は同じ 1 枚に欄が増えていく形です。生徒が書いたものは端末の中に残り、次の回の同じ枚で読み出されます。

回増える欄何を書くか(見本)
2気になっていること/自分の理由昼休みの図書室が静かすぎて入りにくい / 自分が 2 回入り口で引き返した
3問い/問いの型掲示の色を変えると、立ち止まる人は増えるか / 因果
4調べて分かっていたこと/出どころ黄色は目に留まりやすいと書いてあった / ○○(本・ページの名前と、見た日)
5変えるもの/はかるもの/そろえるもの紙の色(白・黄) / 立ち止まった人の数 / 貼る場所・高さ・時間帯
6比べる相手白い紙のままの掲示(同じ時間帯、別の廊下)
75 つの目の見積もり/縮めた所/断りの言葉時間が危ない → 2 週間を 1 週間に / 「数を数えます。名前は書きません」
8集めた件数/集まらなかったもの白 3 日ぶん 41 人、黄 3 日ぶん 38 人 / 雨の日は人が少なく取れなかった
9出た数/言えないこと立ち止まった割合 白 7% 黄 18% / 色以外に何か変わったかは分からない
10使ってもらった相手と反応/やめ方/次の問い図書委員に 1 週間使ってもらった / 学期末に委員会で続けるか決める / 文字の大きさでも変わるか

10分版でもカードは必ず 1 欄進めます。進まない回を作らないのが、細切れでも探究が形になる条件です。カードが手元に無い生徒(前回いなかった、消えた)は、その回の欄だけをその場で書いて始めてよいことを、各回の教師用メモに書いてあります。前に戻らせません。

時間の作り方(10分・20分・50分)

総合的な学習の時間の形は学校によって違います。週 1 コマ 50 分の学校もあれば、朝や終わりの帯で 10 分ずつ、行事の合間に 2 コマ続き、という学校もあります。10 回はどれも 10分版・20分版・50分版の 3 つを用意しています。各回のページの教師用メモに書いてあります。

長さ何をするか向く形
10分決めることを 1 つだけ決め、探究カードの 1 欄を埋める。投影は 3〜4 枚だけ使う朝や終わりの帯、週 1 の短時間
20分体験を 1 つやり、まとめの枚まで行く。カードは 2 欄教科の時間の後半、行事の合間
50分枚を全部使う。体験 2 つと、班で見せ合う時間が入る週 1 コマ、または 2 コマ続きの前半
回10分版で決めること(これだけ)
1気になることを 3 つ書く
26 つの場面から 1 つ選び、自分の理由を一文
3問いの型を 1 つ選び、「〜は〜か」の形に書き換える
4出どころを 1 件だけ記録する
5はかるものを 1 つ決め、数え方を一文で書く
6比べる相手を決める(比べない場合は「比べない」と書く)
75 つの目のうち、いちばん危ない 1 つを選び、縮め方を書く
8今日集めた件数と、集まらなかったものを書く
9出た数を 1 つ書き、言えないことを一文
10誰に使ってもらうかを決め、声をかける

2 コマ続き(100分)で行う場合は、第5〜7回をまとめて 1 回に、第8回(集める)を校内で動く時間に充てると収まりがよくなります。授業時数が取れない場合は、第3・5・6・7・10回を残し、他を 10分版にします。この 5 回が無いと、探究が「調べてまとめただけ」で終わります。第1・2回は学級活動の時間に、第4回は図書の時間に寄せられます。第9回は第8回の終わりに 10 分足す形でも成立します。

設計に 3 回を使う(第5〜7回)

この教材の中心です。ここを飛ばすと、集め終わってから「これでは答えられない」と分かります。集める前に 3 回かけるのは、集めたあとでは取り返しがつかないからです。問いは後から直せますが、取り直せない記録は直せません。そこで止まる探究が多いので、ここに時間を使います。

第5回 何を変え、何をはかるか

問いを、はかれる形に落とします。決めるのは 3 つです。先に日本語の言い方を置いてから、あとで「変数」という語を当てます。語から入りません。

決めるものどういうことか例(掲示の色を変えると、立ち止まる人は増えるか)
変えるもの自分たちで動かすもの掲示の紙の色(白/黄)
はかるもの変えた結果として見るもの前を通った人のうち、立ち止まった人の割合
そろえるもの変わってしまうと比べられなくなるもの貼る場所、貼る高さ、文字、時間帯、曜日

この 3 つをまとめて変数と呼ぶ、と最後の枚で言います。技術分野の D(3) で「しきい値を決めた」ことと同じで、誰が数えても同じ数になる形に決めるのがここの仕事です。「気づいた」ではかれないので、「立ち止まって 2 秒以上見た人の数」のように書き直します。書けていれば、その探究は進みます。書けていなければ、問いに戻ります。記述の問い(どれくらいか)なら、変えるものはありません。はかるものとそろえるものだけを決めます。

第6回 比べる相手を決める

問いの型で、確かめ方が決まります。中学校で使う型は3 つです(「どちらがよいか」を決める評価の型は、第10回で使ってもらうときに扱います)。

問いの型確かめ方比べる相手
どれくらいか(記述)数える・はかる・聞く比べない。まず今の様子を数で出す
A と B に関係があるか(関係)同じ人・同じ場面で両方をはかる散らばりを見る(グラフに点を打つ)
A を変えると B は変わるか(因果)変える側と、変えない側を作る変えなかった側

自分たちでできる確かめ方を、この時間の中で形にします。大きな装置は要りません。

比べる相手が無い計画は、因果の問いには答えられません。第6回の最後に、自分の計画に比べる相手があるかを確かめます。無い場合は「比べない」と書かせ、問いを記述の型に直させます。問いを直すのは、ここまでなら間に合います。

第7回 できるかを、見積もる

ここで多くの計画が縮みます。縮めるのは失敗ではなく、やり切れる形にすることです。5 つの目で見ます。

見る所問い×だったときの縮め方
時間何週間で終わるか。1 回の記録に何分か期間を短く、回数を減らす
人何人に協力してもらうか。頼める当てはあるか対象を 1 クラス・1 学年に絞る
もの器材はあるか。借りられるか手で数える方法に替える(下の道具)
許可誰の許可が要るか。いつまでに取るか教室・学年の中で完結する形にする
安全と迷惑人に不利益が出ないか。断る自由があるか不利益の出る側を作らない形に替える

許可は早く取ります。 誰に、いつまでに、何を言うかを第7回で決めて、その場で下書きまで書きます。校外の相手が要る計画は、返事を待つ日数も入れ、来なかったときのために校内だけでできる縮め方を先に 1 つ書かせます。あわせてやってはいけないことも決めます。片方の人だけ不便にする、成績や当番に差をつける、断れない形で頼む。この 3 つは行いません。断る自由を必ず言葉にし、断った人が誰か分からないようにします。

道具は 2 つに絞る

第5・6回で、生徒は自分の問いに合う道具を選びます。全部は触らせません。選ぶのは 2 つのうち 1 つです。

生徒の言い方道具できること技術分野のどこで触ったか
「実際にどれくらいか、はかりたい」micro:bit明るさ・温度・傾き・音をはかる。条件で光らせる・鳴らす。置いたまま記録できる中学校 D 情報の技術 第8・9回
「差がありそうか、見たい」easyStat表を読み込むと、平均・割合・散らばりが出て、グラフで並べて比べられる。分析サポーターがどれを見ればよいか案内する中学校 D 情報の技術 第10回

統計はここまでにします。平均、割合、散らばり(いちばん大きい数といちばん小さい数の幅)、グラフで並べて比べる。この 4 つです。検定はしません。easyStat には差を調べる機能もありますが、この 10 回では「差がありそうか見る」道具として使い、p 値(=差が偶然かどうかを表す数)の読み方までは踏み込みません。生徒が画面でその数を見つけたときの答え方(「高校で習う数です。いまはグラフの形で言えることを書きましょう」)を、第9回の教師用メモに書いてあります。

端末や micro:bit が無い場合は、次で同じことができます。道具が無いことを理由に、この 10 回を止めません。紙で集めた場合も、第9回でやることは同じです。2 本のグラフを並べて、どちらが大きいか、どれくらい重なっているかを見ます。

無いもの代わりにやること
micro:bitストップウォッチで時間をはかる。手で数えて「正」の字を書く。明るさは「見える/見えにくい」の 2 段階で記録する
一人 1 台の端末紙の記録用紙を配る。表の形(日付・場所・数)だけ先に印刷しておく
easyStat紙の表の合計と、人数で割った平均を電卓で出す。方眼紙に棒グラフを 2 本並べる

作って、使ってもらい、伝える(第10回)

[解説]の自律化の三つ目は「積極的に社会に参画しようとする」です。調べて終わりにせず、誰かが実際に使う所まで行きます。中学校では水準を 2 つにします。

水準どういう状態か残すもの
① 試してもらう相手が一度使った。反応を記録した使った人の言葉、うまくいかなかった所
② 続けて使える手順・置き場所が決まっている。自分がいなくても回る手順書、置き場所、聞く相手の名前

B は①、A は②です。高校版にある三つ目の水準(担当と更新まで決めて仕組みとして残す)は、中学校では求めません。ただし、「やめ方」は全員に書かせます。いつ、誰が、どうやって終わりにするかの 3 つです。始めたものを誰も止められない形で置いていくのは、人に対して無責任だからです。「学期末に図書委員会で続けるか決める」「卒業までに次の人に渡すか、外す」。この程度の一文で足ります。

ここで初めて「どちらがよいか」(評価の型)を使います。作ったものと今までのやり方を並べて、使った人にどちらがよいか聞きます。第3回で型を 3 つに絞ったのは、この型をここまで取っておくためです。作るものは第5・6回で選んだ道具で決まります。micro:bit なら「何を合図にするか」、掲示や紙なら「誰が貼り替えるか」。技術分野 D(2)(3) の「プログラムの評価と改善」(第11回)が、そのまま使えます。

技術分野で、すでにやったこと

探究で必要になることの多くは、技術分野で一度やっています。同じことを二度教えません。各回では、生徒が実際に聞いた言葉で「あの回のあれ」と指すだけにします。技術分野をまだ履修していない学年で行う場合は、第5・6・8回の前に右の列を 1 行ずつ読み上げるだけでも足ります。中身をもう一度教える必要はありません。micro:bit を第5回で初めて触る場合は、micro:bit で動かすの第1回を 20 分だけ先に入れます。

探究のこの回戻る回生徒が聞いた言葉
第3回 問いにする中学校 第6回誰の何を良くするかを、先に決める
第4回 調べる・出どころ中学校 第4・5回誰が言ったか/いつのことか。同じ出来事でも、伝わり方が違う
第5回 はかる形にする中学校 第8回動く前に「こうなるはず」を予想し、実際と比べる
第6回 条件を変える中学校 第9回分岐と反復で、条件を組み立てる
第8・9回 表とグラフ中学校 第10回動かして集めた記録を表にして、数を根拠に決める
第10回 使ってもらう・やめ方中学校 第11・12回動かして、評価し、直す。良い面と心配な面を挙げて、どう使うかを決める

高校版から、何を省いたか

[高校]の探究の進め方 14 回と、この 10 回の対応です。同じにした所と、落とした所をはっきりさせます。高校で同じ生徒を教える先生が、どこから始められるかを見るための表でもあります。

高校版この 10 回どうしたか
探究の過程の四つ、戻ってよいこと第1回同じ。ここは落とさない
自分と社会が重なるところ(自ら発見)第2回教師が 6 つの場面を示し、選ばせる。[解説]が小中は「教師の指導も受けながら設定」とするため
リサーチクエスチョンの 4 つの型第3回3 つに絞る(記述・関係・因果)。評価の型は第10回で使う
先行を調べる第4回同じ。ただし調べる件数は 1〜2 件でよい
変数と操作的定義第5回変える・はかる・そろえるを先に置き、あとで「変数」と呼ぶ。操作的定義という語は使わず「誰が数えても同じ数になる言い方」と言う
確かめ方の決定第6回同じ。比べる相手の有無を必ず確かめる
5 つの目で見積もる第7回同じ。落とさない
道具を選ぶ(4 つから)第5・6回に統合2 つに絞る(micro:bit、easyStat)。easyDataScience と Web アプリは高校へ
データの収集第8回整理と同じ回にまとめる
整理して、分析する(検定を含む)第9回平均・割合・散らばり・グラフ比較まで。検定はしない
途中で見せ合う(独立した回)第8回の後半に吸収独立の回は置かない
形にして使ってもらう(3 水準)第10回2 水準(試してもらう/続けて使える)。やめ方は全員
相手に合わせてまとめる、発表、次の問いへ第10回1 回にまとめる。次の問いを一文書いて終わるのは同じ

別の段階で使う

[解説]は、高等学校と小中学校で目標の構造が違うことを明記しています。高等学校は「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく」、小中学校は「よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていく」。生徒が自分で課題を発見するか、教師の指導も受けながら設定するかの違いです。

段階教材この 10 回から変える所
小学校 総合的な学習の時間ふしぎを確かめる第1〜3回を 1 回にまとめ、テーマは学級で 3 つに決める。第5回は変えるもの・はかるものを絵で決める。第6回は「2 つ作って比べる」だけ。数は数えて表とグラフにするところまで
高等学校 総合的な探究の時間探究の進め方第2回でテーマを自分で発見させる。問いの型を 4 つにする。道具を 4 つから選ばせる。検定・回帰まで進む。社会実装を 3 水準にする

どの段階でも、探究の過程の四つと、戻ってよいことは変えません。中学校で一度この 10 回を通した生徒は、高校の 14 回で第1〜4回を速く通れます。

設計指針(第2版)との対応

[指針]の表記は「カテゴリ・項目・水準」で、末尾の (小情)(中情)(高必)(高選) が扱う段階を示します。カテゴリは、A情報およびコンピュータの原理、B情報の創造とデザイン、Cモデル化とシミュレーション/最適化、Dデータとその扱い、E計算モデル的思考、Fプログラムの活用と構築、Gコミュニケーションとメディアおよび協調作業、H情報社会/メディアと倫理/法/制度、I論理性と客観性、Jシステムとその設計、K問題発見/問題解決、X人工知能(AI) の 12 です。この 10 回は (中情) の水準までで止めます。中心は K・D・I・J の四つです。

WG の要点と、この教材

  1. 情報活用能力を、小学校 → 中学校 → 高等学校を核として体系的に育成する方向(要点 1)→ この 10 回は小学校の 8 回と高校の 14 回の真ん中に置き、高校版から、何を省いたかで接続を明示しました
  2. プログラミング的思考を、手順・コード中心から目的・価値・責任・評価改善を含む課題解決全体へ広げる方向(要点 2)→ 第10回で「やめ方」まで決めさせるのは、責任の側の話です
  3. 「知識・技能の習得にとどまらず、実際の課題解決で活用できる高次の資質・能力」→ この教材は最初から実際の課題だけを扱います
  4. 「逆算し、教科書の見開きを毎時消化する方式から離れる」→ 探究にはそもそも見開きがありません。この文書の順序がそのまま設計です

個人の情報と、人に聞くこと

探究では、人に聞いたり、写真を撮ったり、記録を借りたりします。第7回で、次を必ず決めさせます。文の見本は授業ページの枚に載せてあるので、生徒はそれを写して直すところから始められます。

easyStat は読み込んだ表の計算をブラウザの中で行い、分析用のサーバへ送りません。micro:bit のブロックも同じです。教室コードで集まる部品も、氏名は集めず 24 時間で消えます。

他校でそのまま使える形にする

学校固有の呼び名や、校内の道具の名前は書きません。テーマの例も、どの学校にもある場面(通学、部活動、給食、掲示、図書室、清掃、地域の店)から選んでいます。micro:bit が無い学校の進め方は上の道具の表に、教材ロボットや別のマイコンを使う学校の差し替え方は各回の教師用メモに書きました。

出典

中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編

中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 技術・家庭編「D 情報の技術」

情報教育課程の設計指針 − 初等教育から高等教育まで(第2版)

中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ

この教材の他の段階