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探究の進め方 | 総合的な探究の時間 | 単元設計
逆算で設計する(高次の資質・能力 → 単元の目標・評価規準 → 評価課題 → 学習過程 → 形成的評価)。 根拠は四つ。総合的な探究の時間の学習指導要領と解説、情報教育課程の設計指針 第2版のカテゴリ K、情報・技術WG のまとめ、そして情報の授業で持った道具。本文の [解説][指針][WG] は、下の出典の該当箇所を指します。
この回の並びのファイル名は lessons/t-01〜t-14 です。道具の使い方と、問いの立て方の索引は 情報学探究マニュアル にまとめてあります。
この教材の位置
これは教科ではありません。[解説]が言うとおり、総合的な探究の時間の内容は各学校が定めるもので、決まった教科書はありません。だからこの 14 回が渡すのは、探究の進め方そのものを一周する足場だけです。テーマは生徒が決めます。
対象は高等学校の総合的な探究の時間(課題研究)です。中学校・小学校の総合的な学習の時間で使う場合は、下の別の段階で使うを見てください。
情報の授業との関係も、はっきりさせておきます。情報Ⅰ・情報Ⅱの各回の復習は「探究へ」で終わり、そのメモが探究ノートに集まります。この 14 回は、その溜まったメモを開くところから始まります。逆に、情報Ⅱ (5) の 8 回は情報の中で完結する探究なので、この 14 回と同じテーマで進めてもかまいません。
本質的な問い
自分が本当に気になっていることは何か。それを、他の人にも確かめられる形にできるか。
[解説]の第1の目標「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力」を、生徒が自分に向けて問える形にしたものです。小中学校の総合的な学習の時間が「自己の生き方を考えていく」なのに対し、高等学校は「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し」と[解説]が明記しています。前半の問いはそこから来ています。
探究の過程(この 14 回が回すもの)
[解説]は探究の過程を四つで示し、それが繰り返されるとしています。
| 過程 | この教材の回 | ここで決めること |
|---|---|---|
| ① 課題の設定 | 第1〜4回 | 自分と社会が重なる所を見つけ、リサーチクエスチョンにし、すでに分かっていることを調べて絞る |
| ② 情報の収集(設計) | 第5〜7回 | 変数を決め、確かめ方(実験・調査・観察)を決め、できるかを見積もる |
| ② 情報の収集(実行) | 第8・9回 | 道具を選び、集める |
| ③ 整理・分析 | 第10回 | 分析し、言えることと言えないことを分ける |
| ④ まとめ・表現 | 第11〜14回 | 途中で見せ合い、使ってもらい、相手に合わせてまとめ、発表する |
第11回の中間で、必要なら①に戻ります。[解説]が言う「自らの考えや課題が新たに更新され、探究の過程が繰り返される」のは、ここで起こります。戻ることは失敗ではないと第1回で先に言います。
この教材が他と違うのは、②の「設計」に 3 回を使うところです。変数を決めずに集め始めると、集め終わってから「これでは答えられない」と分かります。そこで止まる探究が多いので、集める前に 3 回かけます。
単元の目標(3観点)
[解説]の第1の目標 (1)(2)(3) を、この 14 回の言葉に直しました。
| 観点 | この教材の目標 | 根拠 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 探究の過程の四つを説明でき、自分の問いに必要な調べ方・集め方・分析の仕方を選んで使える。探究の意義を自分の言葉で言える | [解説 目標 (1)]「探究の過程において、課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究の意義や価値を理解する」 |
| 思考・判断・表現 | 実社会や実生活と自分との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現できる | [解説 目標 (2)]の文言そのもの |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 人と一緒に進め、互いのよさを生かし、自分の知見を社会に返そうとしている | [解説 目標 (3)]「探究に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度」 |
評価課題(この 14 回そのもの)
「自分のリサーチクエスチョンを立て、自分たちでできる形で確かめ、誰かに使ってもらう」
この教材は全体が評価課題です。評価の規準は、[解説]が示す質の高い探究の二つをそのまま使います。他に代えのない、この時間だけの評価軸です。
高度化(探究の過程が質的に高まっているか)
| [解説]の語 | 見る所 | B(おおむね満足) | A(十分満足) |
|---|---|---|---|
| 整合性 | 目的と解決の方法に矛盾がない | 問いの型と、変数・確かめ方が合っている(因果の問いなら比べる相手がある) | 合わない方法を一度試して、変えた記録がある |
| 効果性 | 適切に資質・能力を活用している | 情報の授業で学んだ道具を一つ使っている | 道具を選んだ理由と、限界を言える |
| (やり切れるか) | 見積もって、やり切れる形にした | 5 つの目で見積もり、縮めた所がある | 縮めた理由と、縮めても問いに答えられる理由を言える |
| 鋭角性 | 焦点化し深く掘り下げている | 問いが一つに絞れている | 絞る前と後を比べ、絞った理由を言える |
| 広角性 | 幅広い可能性を視野に入れている | 別の見方があることに触れている | 反対の立場の根拠を一つ挙げて答えている |
自律化(探究が自分のものになっているか)
| [解説]の語 | 見る所 | B(おおむね満足) | A(十分満足) |
|---|---|---|---|
| 自己課題 | 自分にとって関わりが深い課題になる | なぜ自分がこれを選んだかを書いている | 自分の在り方生き方と結びつけて書いている |
| 運用 | 探究の過程を見通しつつ、自分の力で進められる | 計画を立て、遅れたら直している | 過程そのものを振り返り、次の進め方を変えている |
| 社会参画 | 得られた知見を生かして社会に参画しようとする | 相手に一度使ってもらい、反応を記録している | 続けて使える形にし、手順とやめ方まで決めている |
C の生徒への手立ては、どの観点でも同じです。探究ノートを開かせ、自分が書いてきたメモを 1 つだけ選ばせる。そこから問い直します。
各回と評価(形成的評価の場面)
各回のページには、表紙の教師用メモに「この回の評価」を、ふりかえりの枚に「目標の自己評価」(生徒が3段階で答え、投影に分布が出る)を置きます。
| 回 | 題 | 探究の過程 | [解説] | [指針]の水準 | 重点 | 評価場面 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 探究の進め方の全体像 | 全体 | 第2章 特質、第3章 目標、高度化と自律化 | K2L1 → K2L2 | 知 | 探究の過程の並べ替え/気になることの書き出し |
| 2 | 自分と社会が重なるところ | ① | 第4章 探究課題。「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題」 | K3L1(自分や他者の問題を客観的に捉えて記述) | 思・態 | 重なる所の言語化(教室に集まる) |
| 3 | リサーチクエスチョンの設定 | ① | 目標 (2)「問いを見いだし、自分で課題を立て」 | K1L2(問題とそれに影響する事項の関連を定式化) | 思 | 問いの型の判別と、自分の問いの書き換え |
| 4 | 先行研究の調べ方 | ① | 目標 (2)「情報を集め」 | H2L3、I3L2 | 技・態 | 出どころの記録/先行を踏まえた問いの絞り込み |
| 5 | 変数の決定 | ② 設計 | 目標 (1)「課題に関わる概念を形成し」 | D3L2、I1L3(問題を要素に分けて定式化) | 思 | 変える・測る・そろえるの 3 つと、操作的定義 |
| 6 | 確かめ方の決定 | ② 設計 | 目標 (2)。体験活動の重視 | C2L2(モデル図を描く)、K1L3(収束的/発散的手法) | 思 | 実験・調査・観察の選択と、比べる相手の決め方 |
| 7 | 実現可能性の見積もり | ② 設計 | 第5章 内容の取扱い。安全・倫理への配慮 | K3L2(重要な要素の裏付けを取る)、H1L2 | 思・態 | 5 つの目での見積もりと、縮めた計画 |
| 8 | 道具の選択 | ② 実行 | 第5章 内容の取扱い。情報手段の活用 | D5L2、X1L4、J3L1 | 思 | 選んだ道具と、選んだ理由 |
| 9 | データの収集 | ② 実行 | 目標 (2) | K3L2 | 技・態 | 集めたものと、計画とのずれ |
| 10 | 整理と分析 | ③ | 目標 (2)「整理・分析して」 | D5L2、I3L2(主観と客観の区分) | 思 | 分析の結果と、言えないことの線引き |
| 11 | 中間発表 | ①〜③ | 高度化の四つ(整合性・効果性・鋭角性・広角性) | G3L3、G4L3 | 態 | 相互評価/戻る判断 |
| 12 | 社会実装の試み | ④ | 目標 (3)「新たな価値を創造し」。自律化の社会参画 | B6L3、J3L1、F4L3 | 技・思 | 一度使ってもらった記録と、続く形にする手当て |
| 13 | 相手に合わせたまとめ方 | ④ | 目標 (2)「まとめ・表現する」 | B5L4、B6L3 | 思 | 相手を決めた上での出し方 |
| 14 | 発表と次の問い | ④ → ① | 自律化の三つ(自己課題・運用・社会参画) | K3L3、K4L1 | 思・態 | 発表と相互評価/次の問い |
第2回で作る探究カードが、第14回まで引き継がれます。気になること、リサーチクエスチョン、変数、確かめ方、見積もり、道具、結果、使ってもらった記録、相手、次の問いが、同じ 1 枚に積み上がります。
時間の作り方(10分・20分・50分)
探究の時間は学校によって形が違います。週 1 コマ 50 分の学校もあれば、朝や終わりの帯で 10 分ずつ、月に 1 回だけ 2 コマ続き、という学校もあります。14 回はどれも 10分版・20分版・50分版の 3 つを用意しています。各回のページの教師用メモに書いてあります。
| 長さ | 何をするか | 向く形 |
|---|---|---|
| 10分 | 決めることを 1 つだけ決め、探究カードの 1 欄を埋める。投影は 3〜4 枚だけ使う | 朝や終わりの帯、週 1 の短時間 |
| 20分 | 体験を 1 つやり、まとめの枚まで行く。カードは 2 欄 | 他教科と半分ずつ、行事の合間 |
| 50分 | 枚を全部使う。体験 2 つと相互のやりとりが入る | 週 1 コマ、または 2 コマ続きの前半 |
10分版でもカードは必ず 1 欄進めます。進まない回を作らないのが、細切れでも探究が形になる条件です。
| 回 | 10分版で決めること(これだけ) |
|---|---|
| 1 | 気になることを 3 つ書く |
| 2 | そのうち 1 つについて、自分の側の理由を一文 |
| 3 | 問いの型を 1 つ選び、「〜は〜か」の形に書き換える |
| 4 | 出どころを 1 件だけ記録する |
| 5 | 測るものを 1 つ決め、操作的定義を一文で書く |
| 6 | 比べる相手を決める(比べない場合は「比べない」と書く) |
| 7 | 5 つの目のうち、いちばん危ない 1 つを選び、縮め方を書く |
| 8 | 道具を 1 つ選び、理由を一文 |
| 9 | 今日集めた件数と、集まらなかったものを書く |
| 10 | 出た数を 1 つ書き、言えないことを一文 |
| 11 | 4 つの印を他の 1 人に返す |
| 12 | 誰に一度使ってもらうかを決め、声をかける |
| 13 | 相手を一人決め、その人が最初に知りたいことを一文 |
| 14 | 次の問いを一文 |
2 コマ続き(100分)で行う場合は、第5〜7回をまとめて 1 回に、第9回(集める)を校内で動く時間に充てると収まりがよくなります。
授業時数が取れない場合は、第5・6・7回と第12回を残し、他を 10分版にします。この 4 回が無いと、探究が「調べてまとめただけ」で終わります。
設計に 3 回を使う(第5〜7回)
この教材の中心です。ここを飛ばすと、集め終わってから「これでは答えられない」と分かります。
第5回 変数を決める
リサーチクエスチョンを、測れる形に落とします。決めるのは 3 つです。
| 決めるもの | 何か | 例(掲示の色を変えると、気づく人は増えるか) |
|---|---|---|
| 変えるもの | 自分たちで動かすもの | 掲示の紙の色(白/黄) |
| 測るもの | 変えた結果として見るもの | 前を通った人のうち、立ち止まった人の割合 |
| そろえるもの | 変わってしまうと比べられなくなるもの | 貼る場所、貼る高さ、文字、時間帯、曜日 |
そのうえで操作的定義を書きます。「気づいた」をそのままでは測れないので、「立ち止まって 2 秒以上見た人の数」のように、誰が数えても同じ数になる形に決めます。ここが書けていれば、その探究は進みます。書けていなければ、問いに戻ります。
記述的な問い(どれくらいか)なら、変えるものはありません。測るものとそろえるものだけを決めます。
第6回 確かめ方を決める
問いの型で、確かめ方が決まります。
| 問いの型 | 確かめ方 | 比べる相手 |
|---|---|---|
| どれくらいか(記述) | 数える・はかる・聞く | 比べない。まず現状を出す |
| A と B に関係があるか(関係) | 同じ人・同じ場面で両方を測る | 散らばりを見る |
| A を変えると B は変わるか(因果) | 実験。変える/変えないを作る | 変えなかった側(対照) |
| どちらがよいか(評価) | 2 つ用意して比べる | もう一方 |
自分たちでできる実験を、この時間の中で形にします。大きな装置は要りません。
- 2 つ作って比べる: 案内文を 2 通り、掲示の色を 2 色、置き場所を 2 か所。くじで配れば割り当てもできる
- 前と後で比べる: 声かけの前後、注意書きの前後。ただし「他のことも変わったかもしれない」を必ず書く
- 条件を変えて測る: 教室の温度・明るさ・音を micro:bit ではかり、集中や読みやすさと重ねる
- 人を変えずに順番を変える: 同じ人に A → B と B → A の両方をやってもらい、順番の影響を打ち消す
比べる相手(対照)が無い計画は、因果の問いには答えられません。第6回の最後に、自分の計画に比べる相手があるかを確かめます。
第7回 できるかを、見積もる
ここで多くの計画が縮みます。縮めて、やり切れる形にします。5 つの目で見ます。
| 見る所 | 問い | ×だったときの縮め方 |
|---|---|---|
| 時間 | 何週間で終わるか。1 回のデータ取りに何分か | 期間を短く、回数を減らす |
| 人 | 何人に協力してもらうか。頼める当てはあるか | 対象を 1 クラス・1 学年に絞る |
| もの | 器材はあるか。借りられるか | 手で数える方法に替える |
| 許可 | 誰の許可が要るか。いつまでに取るか | 校内で完結する形にする |
| 安全と迷惑 | 人に不利益が出ないか。断る自由があるか | 不利益の出る側を作らない設計に替える |
許可は早く取ります。 誰に、いつまでに、何を言うかを第7回で決めて、その場で下書きまで書きます。校外の相手が要る計画は、返事を待つ時間も見積もりに入れます。
倫理の線も、ここで引きます。人に不利益が出る設計(片方だけ不便にする、成績や評価に関わる差をつける)は行いません。断る自由を必ず示し、断った人が分からないようにします。
情報の授業で持った道具を使う
第6回で、生徒は自分の問いに合う道具を選びます。すべて授業ページの中の覆いで開くので、外のページへ飛びません。
| 道具 | 向く問いの型 | できること | 情報のどこで扱ったか |
|---|---|---|---|
| easyStat | 「A と B に差があるか」「二つの量に関係があるか」「割合が偏っているか」「自由記述に何が多いか」 | 23 の分析。t 検定・分散分析・相関・回帰・クロス集計・因子分析・主成分分析・時系列・テキストマイニング。分析サポーターが手法を案内し、結果には「今回の結果を簡単に説明すると」が高校生向けの言葉で付く | 情報Ⅰ (4) 第8〜10回、情報Ⅱ (3) 第5〜6回 |
| easyDataScience | 「これから何が起きるか」「どのグループに入るか」「写真や音を見分けたい」 | 回帰・分類のモデルを自動で比べ、当たり方を測る。どの列が効いたかも出る。写真(転移学習)と音の分類もできる | 情報Ⅱ (3) 第7〜14回 |
| micro:bit | 「実際にどれくらいか、はかりたい」「条件を満たしたら知らせたい」 | 明るさ・温度・傾き・音をはかり、条件で動かす。置いて記録できる | 中学校 D 情報の技術 第8・9回、情報Ⅱ (4) |
| Python の Web アプリ | 「相手に触ってもらう形にしたい」 | 入力すると結果が返る形。提案を触れるものにする | 情報Ⅰ (3)、情報Ⅱ (4) 第9〜13回 |
道具は問いの型で決まります。第6回は、4 つのうち「自分の型に合う 1 つを決める」回です。手法の名前を知らない生徒には、easyStat の分析サポーターから入らせます。教師用メモにもそう書いてあります。
データが外へ出ないことが、この 4 つを選んだ理由の一つです。 easyStat と easyDataScience は、読み込んだ表の計算をブラウザの中で行い、分析用のサーバへ送りません。micro:bit のブロックも Web アプリも同じです。生徒が集めた記録には、断って聞いたことや、教室の様子が入ります。それを外へ出さずに分析できることは、下の個人の情報と、人に聞くことと直接つながります。どちらのアプリにも生成 AI による解釈支援が付いていますが、押さなければ外へは出ません。使う場合は、何が送られるかを画面で確かめてからにします。
社会実装まで行く(第12回)
[解説]の自律化の三つ目は「得られた知見を生かして社会に参画しようとする(社会参画)」です。調べて終わりにせず、誰かが実際に使う所まで行きます。水準は 3 つあり、どこまで行けたかで評価します。
| 水準 | どういう状態か | 残すもの |
|---|---|---|
| ① 試してもらう | 相手が一度使った。反応を記録した | 使った人の言葉、うまくいかなかった所 |
| ② 続けて使える | 手順・置き場所・直し方が決まっている。自分がいなくても回る | 手順書、置き場所、連絡先 |
| ③ 仕組みとして残る | 担当・更新・やめ方が決まっている | 引き渡しメモ(誰が、いつ、何をするか。やめるときは誰が決めるか) |
B は①、A は②以上です。③まで行くのは一部ですが、「やめ方を決める」ことを必ず書かせます。始めたものを誰も止められない形で置いていくのは、社会に対して無責任だからです。
作るものは第8回で選んだ道具で決まります。Web アプリなら「入れるもの・返るもの」、micro:bit なら「何を合図にするか」、紙や掲示なら「誰が貼り替えるか」。情報Ⅱ (4) 第11回の「入口と出口は約束、中身は自由」が、そのまま使えます。
情報の授業で、すでにやったこと
探究で必要になることの多くは、情報の授業で一度やっています。同じことを二度教えません。各回では、生徒が実際に聞いた言葉で「あの回のあれ」と指すだけにします。下の右の列は、その回のまとめの見出しです。
| 探究のこの回 | 戻る回 | 生徒が聞いた言葉 |
|---|---|---|
| 第3回 問いにする | 情報Ⅰ (1) 第9回、中学校 第11回 | 問題は、理想と現実のギャップで書く |
| 第4回 調べる | 情報Ⅰ (1) 第5回、中学校 第5回 | だれが言った / ほかでも言っている / いつのこと |
| 第5回 集める計画 | 情報Ⅰ (4) 第8回 | 形式が決まると、できる計算が決まる |
| 第5回 集める計画 | 情報Ⅰ (4) 第9回 | 集める前に決め、分析の前に見直す |
| 第5回 個人の情報 | 情報Ⅱ (4) 第9回 | 残すのは、あとで使うものだけ。項目・形・いつまで・誰が見られる |
| 第6回 道具を選ぶ | 情報Ⅱ (3) 第5回 | 答えの形が決まれば、道具は決まる |
| 第7回 集める | 中学校 第10回 | 残して、見える形にして、数で決める |
| 第8回 整理する | 情報Ⅱ (3) 第4回 | 機械が直せる所と、人が決める所。整形は、結果の一部として書く |
| 第8回 分析する | 情報Ⅰ (4) 第10回、情報Ⅱ (3) 第6回 | 一緒に動いていても、動かしているとは限らない。言えることの外側に、線を引く |
| 第8回 モデルを使うなら | 情報Ⅱ (3) 第7回、第13回 | 引いた直線を、どこまで使ってよいか。機械は分けるだけ、意味をつけるのは人 |
| 第9回 はかる・動かす | 中学校 第8・9回 | はかって、くらべて、動かす。繰り返しの中で、条件を組み立てる |
| 第9回 作る | 情報Ⅰ (3) 第11回、情報Ⅱ (4) 第11回 | 目的・手順・プログラムの順で作った。入口と出口は約束、中身は自由 |
| 第11回 まとめる | 情報Ⅰ (4) 第11回、小学校 第7回 | 問いから図まで、順に決めた。正しい数でも、見せ方で「ほんとう」がずれる |
| 第12回 直して出す | 情報Ⅰ (3) 第12回、情報Ⅱ (4) 第16回 | プログラムの評価と改善 |
情報の授業で使った道具も、そのまま思い出せます。第6回・第8回の教師用メモに、次を戻り先として書いてあります。
| 思い出したいこと | 戻る道具の枚 |
|---|---|
| 尺度(足してよい列か) | 情報Ⅰ (4) 第8回 データの尺度水準 |
| どのグラフを選ぶか | 情報Ⅰ (4) 第9回 データの可視化 |
| 散布図と相関係数、擬似相関 | 情報Ⅰ (4) 第10回 散布図と相関係数/因果関係と擬似相関 |
| 表を結合する、必要な行だけ取り出す | 情報Ⅰ (4) 第7回 リレーショナルデータベースの操作 |
| 条件を変えて試す(シミュレーション) | 情報Ⅰ (3) 第9回 モデル化とシミュレーション |
情報を履修していない生徒がいる場合は、第5・6・8回の前に、上の「生徒が聞いた言葉」を 1 行ずつ読み上げるだけでも足ります。中身をもう一度教える必要はありません。
別の段階で使う
[解説]は、高等学校と小中学校で目標の構造が違うことを明記しています。高等学校は「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく」、小中学校は「よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていく」。生徒が自分で課題を発見するか、教師の指導も受けながら設定するかの違いです。
| 段階 | 変える所 |
|---|---|
| 中学校 総合的な学習の時間 | 第2回の「自分の在り方生き方」を「自分が続けたいこと・気になっていること」に言い換える。第3回は問いの型を 2 つ(どれくらいか/どちらがよいか)に絞り、教師が候補を 5 つ用意する。第5回の変数は「変えるもの」と「測るもの」の 2 つだけにする。第8回の道具は micro:bit と easyStat の 2 つに絞る。第12回は①試してもらうまで |
| 小学校 総合的な学習の時間 | 第1〜3回を 1 回にまとめ、テーマは学級で 3 つに決める。第5回は「変えるもの」と「測るもの」を絵で決める。第6回は「2 つ作って比べる」だけにする。第8回は行わず、数を数えて表とグラフにする(小学校版 第7回)。全体で 8〜10 回に縮める |
どの段階でも、探究の過程の四つと、戻ってよいことは変えません。
設計指針(第2版)との対応
- K. 問題発見/問題解決: この教材の背骨です。指針は K1L2・K1L3・K2L2・K3L1・K4L1 を「情報科の必履修科目の中で問題解決の一環として実践を通じ扱う」としています。情報Ⅰ で一度通したものを、ここでは教科の枠を外してもう一度回します。K3L3「『誰にとっての問題か』『解決が必要な問題か』などメタ認知に検討できる」は大学段階の水準ですが、第12回の振り返りで入口を作ります
- D. データとその扱い: D5L2(実データに対する重回帰/時系列/移動平均/クラスタなどの分析。高選)を、第8回で自分のデータに使います。指針が言う「興味の持てる実データの実習」が、ここでは自分の探究のデータになります
- C. モデル化とシミュレーション/最適化: C2L2(与えられた/見聞した事象に対するモデル図を描くことができる。高選)を第6回で使います。「変えるもの → 測るもの、そろえるもの」の関係を図に描くのが、確かめ方を決めるということです
- I. 論理性と客観性: I3L2(主観と客観を区分して受け取る・伝える)が、第4回と第8回の中心です。調べたことと自分の意見を分けて書けるかを見ます
- H. 情報社会/メディアと倫理/法/制度: H2L3(情報操作/印象操作を認識できる。高必)は第4回で、出どころの確かめとして扱います。人に聞く場合の断りと、個人が分かる情報の扱いも第5・7回で必ず触れます
- G. コミュニケーションとメディアおよび協調作業: G3L3(集団の前でプレゼンテーション)と G4L3(自分の望みと違う発言でも相手の立場を理解する)は、第10回の中間と第12回の発表がその場面です
WG の要点と、この教材
- 「知識・技能の習得にとどまらず、実際の課題解決で活用できる高次の資質・能力」(要点 2)→ この教材は最初から実際の課題だけを扱います
- 「生活や社会を情報の観点から捉え、情報技術で問題解決し、新たな価値創造を支える」(要点 3)→ 第6・9回で、情報技術を自分の問いに使います
- 「PBL による統合へ接続」(要点 4)→ 情報Ⅰ・Ⅱ の各単元末の課題が、ここに流れ込みます
- 「逆算し、教科書の見開きを毎時消化する方式から離れる」(要点 7)→ 探究にはそもそも見開きがありません。この文書の順序がそのまま設計です
個人の情報と、人に聞くこと
探究では、人に聞いたり、写真を撮ったり、記録を借りたりします。第5回と第7回で、次を必ず決めさせます。
- 聞く前に断る。何に使うか、どこまで出すかを先に言う
- 名前を集めない。集めた記録に名前・住所・学校名・顔写真を入れない。分析に要らないものは最初から取らない
- 出す前にもう一度確かめる。第11回で、外に出す形に個人が分かるものが残っていないかを見る
- 写真や音を使うなら、写っている人・声の主に断る。第9回で easyDataScience の画像・音の分類を使う班は、人が写ったものを避けるか、本人の許しを取る
教室コードで集まる部品も、氏名は集めず 24 時間で消えます。
他校でそのまま使える形にする
学校固有の呼び名や、校内で使っている道具の名前は書きません。テーマの例も、どの学校にもある場面(通学、部活、食堂、掲示、地域の店、行事)から選んでいます。道具は 4 つとも、ブラウザだけで動きます。
出典
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編
- 文部科学省、平成30年7月。解説 総合的な探究の時間編(PDF)、高等学校学習指導要領の告示・解説の一覧
- 該当箇所: 第2章 総合的な探究の時間の特質(探究の過程の四つ、質の高い探究=高度化(整合性・効果性・鋭角性・広角性)と自律化(自己課題・運用・社会参画))、第3章 目標(第1の目標 (1)(2)(3) と、小中学校の総合的な学習の時間との構造の違い)、第4章 各学校において定める目標及び内容(探究課題と、探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力)、第5章 指導計画の作成と内容の取扱い、第9章 学習指導、第10章 総合的な探究の時間の評価
- 中学校・小学校の総合的な学習の時間は、中学校学習指導要領(平成29年告示)解説の一覧と小学校学習指導要領(平成29年告示)解説の一覧
情報教育課程の設計指針 − 初等教育から高等教育まで(第2版)
- 日本学術会議 情報学委員会 情報学教育分科会 報告、令和8年(2026年)5月12日。報告本文(PDF)、情報処理学会の紹介ページ
- 使った箇所: カテゴリ D・G・H・I・K の項目と水準の表、「学校段階ごとの扱い」の高等学校の記述
中央教育審議会 教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ
- 文部科学省。会議のページ(議事録・配付資料)、第11回 配付資料(2026年6月25日)
- 審議中のため、方向として参照し、実施は現行の学習指導要領に合わせます